「ホワイトナイト」
第十章

ホワイトナイト89

 ←ホワイトナイト88 →ホワイトナイト90
「……そんな」             
 あの綾を袖にしてまで男の自分を選ぶのか。猛は見開いた目に熱い涙を溢れさせる。
「だって僕は男ですよ……?」
「わかってるよ。そんなことぐらい」      
 喘ぐように訴えても、陽介は一笑に伏して肩をすくめ、、額にそっと口づけてくる。そんな彼にネクタイの端を持ち上げられ、了解済みだと上下に振られてからかわれ、猛は可憐に睫毛を震わせて言う。
「どうかしてるよ、本当に……」
 なのに、どんなに言葉で拒否しても、目顔で強く求めてしまう。抱きしめて欲しいと思ってしまう。そんな猛に応えるように、陽介がはにかむように微笑んだ。         

 「……お前は? 猛」           
 猛の頬を指の背で撫で、陽介が今すぐ選択しろと迫ってくる。
 このまま自分を拒絶するのか。それとも躊躇や後ろめたさを一緒に越えて、恋人になってくれるのか。越えられそうで乗り越えきれない壁の前で猛が逡巡していると、陽介に不意打ちのように唇を重ねられる。                               
「陽介さん……」
「お前。焦ると子供の匂い、するよな? いつも」
 唇をそっと啄ばむだけのキスをして、猛を組み伏せた陽介が猛の頭を肘の間に挟み込む。そうして愛おしそうにキスの雨を降らせる陽介に、猛は惚けたような目を向けた。   
「……匂い?」
「あっためたミルクの匂い。スゲェ可愛い」
 可愛いと、笑いながら頬にも吸いつき、陽介が覆い被さってくる。そのまま猛の肩口に顔を埋め、身体の痛みを堪えるようにじっと息をこらしていた。      

「……陽介さん?」
 強ばる陽介を横目で窺い、猛が思わず身動ぐと、
「この匂いだ……」 
 と、絞り出すように呟いた陽介の唇が頬からうなじに流れていった。まるで飢えた乳児が母親の乳房を求めるように性急にきつく肌を吸い、深く息を吸い込むと、猛をかき抱く腕に力を込める。
 どんなに抱いても抱き直しても、まだ足りないというように。




にほんブログ村 BL小説
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png ホワイトナイト
総もくじ 3kaku_s_L.png ほんとのことを言ってくれ
総もくじ 3kaku_s_L.png 夜のギヤマン
総もくじ 3kaku_s_L.png 死か降伏か
総もくじ 3kaku_s_L.png 咲かない桜の桜守
総もくじ 3kaku_s_L.png 向かい風を行く
もくじ  3kaku_s_L.png 電子書籍関連
総もくじ  3kaku_s_L.png ホワイトナイト
総もくじ  3kaku_s_L.png ほんとのことを言ってくれ
総もくじ  3kaku_s_L.png 夜のギヤマン
総もくじ  3kaku_s_L.png 死か降伏か
総もくじ  3kaku_s_L.png 咲かない桜の桜守
総もくじ  3kaku_s_L.png 向かい風を行く
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
【ホワイトナイト88】へ  【ホワイトナイト90】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 現在非公開コメン卜投稿不可です。
  • 【ホワイトナイト88】へ
  • 【ホワイトナイト90】へ