「ホワイトナイト」
第十章

ホワイトナイト87

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「あんな綺麗な恋人がいるくせに、なんで急に僕なんか……っ!」
 こんな風に迫っても、最後は綾の所に戻るくせに。
 いつもその場限りの勢いで翻弄し、甘いキスと抱擁で惑乱するだけしておいて、置いてきぼりにされてきた恨みつらみが噴き出して、ぶわっと涙が溢れ出た。
「付き合ってねえって! なに言ってんだ!」
 陽介はそれでも頑として否定した。図星をさされて動揺したのか、声も上擦り、瞳が激しく泳いでいた。
「だって、仲いいじゃないですか!」
「仲はいいけど寝てねえよっ!」
 猛の胴を跨いだまま、陽介が畳みかけてくる。そうして声を荒げると、片手で額を掻きむしり、獣のように唸り出した。 

「誰がそんなデマ、吹き込みやがった!」   
「だって。……だって、一緒にシカゴに行ったりしてるじゃないですか。だから、てっきりそうなんだって……」         
 陽介の思いがけない剣幕に気圧されるように息を止め、猛は語尾を濁らせた。しかも、あけすけに『寝てない』などと反論までされ、じわじわ頬を赤らめる。

「……だから、お前。あんなに綾さんにこだわってたのか」          
 そのうえ何かが急に腑に落ちたように含み笑われ、猛は思わず否定した。     
「僕は別に、そんなこと……っ!」      
「綾さんは大事な仕事仲間だ。頼りにしてるし、信頼している。だけど、俺はそういう気持ちになったことは一度もない」      
 陽介は猛の言葉尻を捕らえるように言い切ると、深々息を吐き出した。そうして猛の額に額を合わせ、目の奥を覗き込んでくる。
「だけど、俺にはお前しかいない。お前がまだ東京にいた時も、お前の実家の近くにいれば、いつかまた会えるんじゃないかと思ったから。だからまたこの街道に戻ってきたんだ」
 猛のうなじに手を添えた陽介の囁く息が熱をはらみ、口づけのように猛の唇をかすめて消える。言いながら、うなじを撫でた指先までが燃えるように熱かった。

「だけど、綾さんは絶対、陽介さんが……」     
 猛は言いかけてふいに我に返り、口を噤んで顔を背けた。 




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