「ホワイトナイト」
第十章

ホワイトナイト86

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 陽介が謝罪に応えてくれているのはわかる。
 けれど、さっきから髪に感じる息と唇。抱きしめられた胸の熱さに戸惑って、猛は必死に身じろいだ。それでも倒れ込んでくる男の重さに堪えかねて、ソファの上に仰向けた途端、両肩をぐっと押さえ込まれた。            

「陽介さ、ん……?」               
「……頼むよ」           
 と、陽介が猛を組み伏せたまま、万策尽きたように八の字に眉を下げている。
 猛は驚きのあまり心臓が凍ったようになり、天井灯を背中にした陽介を唖然と見上げるしかない。時間ごと凝結したような静寂に圧迫されて胸が苦しい。陽介が何をしようとしているのか。わかっているのにわからない。
 瞠目したまま、耳鳴りがするほど異様に鼓動を逸らせていると、陽介の顔がキスの角度で下りてきた。

「陽介さん……っ! なに……っ」                      
 その唇が唇に触れかけた瞬間に、叫んで咄嗟に顔を背ける。
 何が『頼む』だ。冗談じゃない。いつものようにからかい半分でもなくて、勢いみたいなものだと言うなら、いっそう質が悪かった。
「だって、陽介さんは綾さんと……!」 
 肘を突っ張り、必死に押し戻しながら怒鳴りつけると、陽介が面食らったようにきょとんとした。
「……綾さん?」               
 陽介は不可解そうに眉間を曇らせ、逆に猛に問い質した。          

「綾さんが何だ。どういう意味だ」
「だって、綾さんと付き合ってるんでしょう、陽介さん!」              
「はあっ?」
 陽介は声を上擦らせたが、その大声も丸くした目も腹立たしくて、猛は肩で息をした。まさかこの期に及んでとぼける気なのか。その気になったら相手が男でもいいのかと、仇のように睨みつける。




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