「ホワイトナイト」
第十章

ホワイトナイト85

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「みっともないのは僕の方です……」    
 ビールの缶をテーブルに戻し、猛は虚ろに呟いた。   

「……猛?」
「僕、本当は陽介さんが大変な時に自分が傍にいられないのが悔しかっただけなんです。一緒にいたって何の役にも立てないくせに。僕だけ除け者にされたみたいに勝手にひがんで。……ずっと拗ねてて」
「猛……」                
「陽介さんは自分が泥を被って、僕達を守ってくれたんじゃないですか。なんでみっともないんですか。カッコ良すぎじゃないですか」              
 結局許せないのは陽介ではなく、陽介にとって特別でもなくいちばんでもない自分自身だったのだ。呻くように告げながら両手で顔を覆っていると、すぼめた肩を叩かれる。 
「もう、いい。……泣くなって」  
 陽介はぐずる子供をあやすように猛の背中を上下に擦り、直後に隣に移ってきた。

「俺はお前がいたから、ここまで思い切ったことができたんだ」              
 間近に迫った陽介に、どこか性急に訴えかけられ、猛はぽかんと目を上げる。
「陽介さん……?」
 覗き込んでくる瞳が不安げに揺れていた。
 何か言いかけたのに逡巡し、伏し目になって後ろを向くと、勢い込んで向き直る。
 そのくり返しをどのくらい黙って見ていただろう。
 次の刹那、頭が仰け反るほどの勢いで陽介に腕を引っ張られ、背中が反るほど抱きしめられる。猛はその胸の中で息をつめ、木偶のように固まった。 
 自分に何が起きているのかわからない。
 陽介は何がしたいのか。 頭の中が真っ白になり、猛はひたすら瞬きをする。

「お前に売られた喧嘩じゃなかったら、俺だってここまでやれたかどうかわかりゃしねえ。だから、お前がここまで俺を押し上げてくれた。全部お前がいてくれたから……」
 喘ぐように言い募るなり、猛の髪に頬をすり寄せ、陽介が唇を押しつけてくる。
「よ、……陽介さん。あの、あっ……」




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