「ホワイトナイト」
第十章

ホワイトナイト84

 ←ホワイトナイト83 →ホワイトナイト85
「じゃあ、まあ、……座れよ。時間の事も気にしなくていいから」
 と、応接セットのソファに座った陽介に促され、猛も向かいあわせに腰を下ろした。続いて差し出されたビールを受け取る猛を眺め、陽介がふいに笑み崩れて言う。
「大体、考えてもみろ。俺んとこみたいな弱小ファンドが上場一部の大企業に喧嘩、ふっかけんだぞ? それこそ汚ねえ手でも何でも使って奇襲かけるぐらいしか勝算ねえだろ」   
 陽介はおどけるようにまくしたてると、煙草を出して口にした。だが、火を点けるでもなく唇で上下に揺らして玩んでいる。

「だから、批判は覚悟の上だった。実際、俺が芹沢会長挑発して怒らせたのも『戦略』だった訳なんだし。腹黒いって言われても、しょうがねえって思ってた」    
「そんな……」
「本当にこっちもギリギリだったし、なりふり構わずだったからな。みっともねえだろ? だから嫌だったんだよ。お前にいろいろ知られるの」
「……えっ?」 
「それに、お前は嫌いだろ? こういう駆け引きみたいなことも、裏工作する狡いヤツも……」         
 猛は唖然と声を消え入らせたが、陽介はバツが悪そうに目を逸らしている。       

「……じゃあ、僕にずっと黙っていたのは」  
 嫌われたくない。
 みっともない姿を見せたくなかったとでも言うのだろうか。不貞腐れている陽介の顔には気まずさと少年のはにかみが混在し、猛の胸をドギマギさせる。
 今、ここにいるのは自分がよく知る陽介だった。                    
 わがままで強引で、態度も言葉も素っ気ないのに、どこまでも優しく誠実なひと。その陽介を『卑劣な手段で会社を乗っ取る悪徳ファンド』と非難した自分が自分で情けなくなり、泣き出しそうに顔を歪める。




にほんブログ村 BL小説
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png ホワイトナイト
総もくじ 3kaku_s_L.png ほんとのことを言ってくれ
総もくじ 3kaku_s_L.png 夜のギヤマン
総もくじ 3kaku_s_L.png 死か降伏か
総もくじ 3kaku_s_L.png 咲かない桜の桜守
総もくじ 3kaku_s_L.png 向かい風を行く
もくじ  3kaku_s_L.png 電子書籍関連
総もくじ  3kaku_s_L.png ホワイトナイト
総もくじ  3kaku_s_L.png ほんとのことを言ってくれ
総もくじ  3kaku_s_L.png 夜のギヤマン
総もくじ  3kaku_s_L.png 死か降伏か
総もくじ  3kaku_s_L.png 咲かない桜の桜守
総もくじ  3kaku_s_L.png 向かい風を行く
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
【ホワイトナイト83】へ  【ホワイトナイト85】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 現在非公開コメン卜投稿不可です。
  • 【ホワイトナイト83】へ
  • 【ホワイトナイト85】へ