「ホワイトナイト」
第十章

ホワイトナイト83

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陽介の返事を頭の中で反芻している間にも、不機嫌そうに畳みかけられ、猛はますます萎縮した。
 陽介が気を悪くしても当然のことを言ったのだから、どんな非難を受けようと、謝罪だけはと思ってきた。それでも、言葉や態度の端々にあからさまな拒絶を感じるたびに胸をえぐられるようだった。       

「この前は、僕……。本当にすみませんでした。今度のTOBは僕達を守るためにしたことなのに、陽介さんを責めるような言い方して……」         
 猛はなけなしの勇気をふり絞り、訥々と詫びて頭を下げる。 
 ただ、今はまだ陽介がそれをどんな顔でどう受け止めたのかを知るのは恐い。猛はもう一度頭を下げると、逃げるように踵を返して背を向けた。と同時に、
「批判があるのはわかていた」       
 という、陽介の自嘲めいた投げやりの言葉が耳に届き、猛は思わず足を止めた。リビングの端で振り向く猛に苦笑をもらし、陽介が切なく双眸を細めさせた。

「……陽介さん」
 こんなに儚げな陽介を見るのは初めてだった。 
 まるで今すぐ誰かが支えなければその場に頽れそうな陽介を、猛は息つめたまま凝視した。けれど、陽介はすぐに伏し目に笑い、缶ビールを両手に携えリビングまで来る。  

「お前、ビールで良かったか? 俺も呑むから、今日はもう車で送ってやれねえけど」
「そんな、……いいです。歩いて帰れますから大丈夫です」        
 さっきまでの険悪な空気はいつのまにか霧散して、陽介の顔も口調も穏やかだった。拙い謝罪だったけれど、少しでも陽介の怒りを和らげることができたのなら良かったと、猛も僅かに頬をゆるめた。




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