「ホワイトナイト」
第九章

ホワイトナイト81

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 もみじや椿の植栽に苔むした水鉢や八角灯篭を配した庭を、置き行灯が点々と淡く照らし出している。
 水鉢に映る闇と月。 
 水打ちされたアプローチの敷石を足早に過ぎた陽介が茅葺き門をくぐり抜けると、黒塗りの社用車が陽介の脇に進み出てくる。運転手に後部座席のドアを開けられ、乗り込もうとする陽介を、寸での所で呼び止めた。

「陽介さん!」
 猛は靴音を響かせながら敷道を抜け、門の外へと飛び出した。と同時に、携帯を耳に当てた陽介が肩越しに振り返り、感情のない目を向けてくる。       
「あの……」  
 息急ききって駆けてきた猛は、その冷ややかな目の色に突かれたように息を呑んだ。まるで、これ以上何の用だと言わんばかりの眼差しだった。それでも猛は肩を震わせ、決死の思いで懇願した。

「少しだけ……、お時間頂けませんでしょうか」  
 多忙を極める陽介を呼びつけてこんな密談をさせ、そのうえ時間を取らせるわけにはいかない。そんなことは重々承知していたが、呼び止めないではいられなかった。 

 目顔で縋りついた猛をいつしか静謐な目で凝視していた陽介が、やがて顔から携帯を離してため息を吐く。
「……乗れよ」
 顎でしゃくって乗車を促す陽介に、猛は無言で頷いた。一礼をして後部座席に乗り込むと、陽介が続いて隣合わせる。
 直後、運転手によって閉じられたドア。
 車は音もなく滑り出し、街中から山間に向かって走り始める。

 広々とした後部座席で端と端に別れて座り、猛は陽介にならうように流れる景色を眺め続けた。陽介は疲れたように深い息を吐き出すと、窓の外に目を向けたまま長い脚を組み替えていた。 




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