「ホワイトナイト」
第九章

ホワイトナイト79

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「成井社長。おひとつ、いかがですか」
  真綿を喉に詰めたような息苦しいほどの沈黙を芹沢製薬の専務が終わらせ、陽介の前に徳利を掲げる。金箔に紅白梅の徳利が微かに震えて見えたのは、うがちすぎというものだろうか。
  しかし、陽介はそれを上目に一瞥しただけで、杯も持たずに言い捨てた。

「まずは、ご用件を伺いましょう」             
「……陽介さん」                      
 取りつく島もないような抑揚のないもの言いに、猛の方がすくみあがった。専務も行き場をなくした徳利を下ろし、会長と顔を見合わせている。              
「成井君とは、いろいろと感情の行き違いがあったように思う。はからずも君に不快な思いをさせたのであれば、謝罪しよう」    
 芹沢会長が役者のように慇懃な口上を述べるが、陽介は眉ひとつ動かさなかった。憎々しげに口を歪める会長を伺い見ながら、専務が恐々説明を継ぐ。       

「今日、成井社長にご足労頂いたのは、我が社の再建案を私どもからご提案させて頂きたいと思いまして」
 専務は額に汗を浮かせながら、正面の陽介に分厚い冊子を手渡した。
 その間、会長はこれ見よがしに腕を組み、ずっと顔を背けたままだ。先付に箸をつける者すらいない中、冊子をめくる紙擦れの音だけが束の間続いた。

「なるほど」
 流し読みした束を失笑混じりに放り投げ、陽介は角卓の下で足を崩した。        
「買収され、我々に吸収合併されるのではなく、業務提携の形態を取りたいと」
 嘲るように口角を上げ、陽介が絹の脇息に肘を預ける。陽介のあからさまな拒絶に専務が慄き、身を乗り出させて言葉を重ねる。   




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