「ホワイトナイト」
第八章

ホワイトナイト76

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「これ。実は陽介に頼まれて、隠し撮りした写真なんだ」            
 そう言って見せられたのは旅館のフロントに立つ自分であり、笑顔で客を送り出す自分だった。撮られていたのは正月だけではなかったのかと、猛は円らな瞳を丸くした。

「……でも、陽介さんに頼まれてって、一体どういう……」
「猛君。陽介がシカゴにいた間、途中で連絡しなくなっちゃっただろう? あいつ、それでメチャクチャ焦ったらしくて、俺に電話してきたんだよ。猛君が元気にしてるか、追いつめられてないかって、俺に傍で見ててくれって言ってきて。で、元気にしてる証拠写真じゃないけれど、こうしてメールで送って毎日報告してたんだ」 

 苦笑いした望月が携帯を下ろし、再びクローゼットの中の衣類や細々とした日用品をトランクの中へ移し始めた。
 その量の多さを見るにつけ、三週間もの長期滞在だったことをあらためて知らされる思いがした。その三週間もの長期滞在を陽介が依頼し、望月もそれを承諾してくれていたというのだろうか。 
 自分のために?
 心配をして?茫然自失で立ちすくんだまま、信じられない思いでいると、望月とふいに目が合った。 

「……って、言っても、俺は陽介に自伝や何かのオファーがきたら、俺に書かせるように言ってあるから。お互い貸し借りなしってことだけど」
 悪戯っぽく含み笑って立ち上がり、望月は小柄な猛を伏し目に捉える。    
「あいつは本当に猛君を心配してたし、毎日毎日考えてたよ。少しでもメールするのが遅れると、すぐに催促してくるぐらい」     
「望月さん……」                               
「許してやってよ。陽介は猛君のこと、頭になかったわけじゃないから。っていうか、頭ん中、猛君のことしかないから、あいつ」
 あっけにとられる猛の肩にゆっくり手を置き、望月が請うようにぎゅっと力を込める。
 それではやはり望月が年末から宿泊し続けたのは、本当に自分の安否を気遣う陽介に頼まれたからだったのか。猛は半ば放心したまま貴賓室を後にした。




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