「ホワイトナイト」
第八章

ホワイトナイト75

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「失礼します。彦坂です」        
 猛に話があると言われて訪ねて行くと、望月がベットルームでトランクを拡げ、クローゼットの中身を詰めている。      
「明日の朝、チェックアウトしたいんだけど。大丈夫かな?」
 望月に笑顔で訊ねられ、猛は一瞬面食らったように息を呑んだ。
「はい。それはもちろん大丈夫ですけれど……」
 望月からは最初にいつまでという、明確な宿泊予定を聞かされてはいなかった。しかし、それにしても急な話だとは思ったが、客の事情をあれこれ詮索すべきではないだろう。猛はあえて深追いはせずに微笑みかける。

「いいお写真は撮れましたか?」
「ありがとう。猛君にも本当にお世話になって」
 床に山積みにされた書類や資料をダンボールに納めながら、望月も機嫌よく答えてくれる。
 もしかしたら、こちらに何か粗相があって引き払おうとしているのかとも危惧したが、どうやらそうでもないらしい。無意識のうちに猛が小首を傾げていると、望月が梱包の手を止め、振り返る。        

「陽介とは、もう話したんだろ?」
「えっ……?」
 単刀直入に切り込まれ、ドキリと鼓動が波打った。けれどもすぐに接客用の微笑を浮かべ、猛は鷹揚に頷き返した。

「ええ。……さっき挨拶に来て下さって。望月さんもお会いになりましたか?」
「それがさ、あいつ。俺ん所はメールで済ませて素通りなんだよ。薄情だろう? 猛君の顔だけは、ちゃっかり見てったくせにさあ」
 望月に忌ま忌ましげに告げられたものの、何と返せばいいのかわからず、猛は愛想笑いを続けるしかない。
 それより個人的に自分にしたい話というのはチェックアウトの件だったのか。
 それとも他にあるのかどうか、猛は落ち着かない気持ちでテーブルの上の湯呑みや茶卓を片付けていた。すると、望月はおもむろに携帯を操作し、猛の前に差し出してくる。   




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