「ホワイトナイト」
第七章

ホワイトナイト69

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「だから、TOBは情報戦だって言ってるでしょう?」                  
 敷石を渡る靴底の音が近づいてきて、黒のロングコートをまとった綾が足元に落ちた眼鏡を拾う。               

「相手の不利になる情報を流して企業価値を下げるのは、買収の常套手段なの。自分達が敵対的買収を仕掛ける側なら、どうやって悪役イメージを払拭するかを考えるのも、大事な戦略のうちなのよ」             
 猛の前を行き過ぎながら、陽介に眼鏡を差し出した。その靴音に驚いたように野鳥が一斉に空に羽撃き、まっすぐ歩み寄ってきた綾の気迫に気圧されるように、猛も後ろに退いた。 

 「相手を貶めるのも罠にはめるのも戦略なの。戦略的だから何だって言うの? 戦争なのよ。TOBは」
 陽介の隣に並んだ綾が艶のある巻き髪を風になびかせ、猛を傲然と睨みつける。綾の全身から立ち昇る憤怒の炎が目に見えるかのようだった。

「すみません、綾さん。こいつの言い方が気に触ったのなら俺が謝る。だから、今はこいつのことは……」
 陽介はすぐに二人の間に割って入り、まるで綾から庇うように猛を自身の背後に押しやる。その瞬間、綾が珍しく声を荒げた。 「また、そうやって隠そうとする!」
「……綾さん」                
「陽介さんだって悪いのよ! TOBのことだって、私は猛君にはちゃんと話して待っててもらおうって言ったのに。陽介さんが反対するから誤解されるし、隠そうとするから猛君にも責められるのよ!」
 綾は陽介に迫ったが、陽介は背中を強ばらせたまま答えなかった。だが、猛は陽介の正面に回り込み、非難するように問い質す。 
「僕にはTOBの話はするなって、陽介さんが言ったんですか……?」




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