「ホワイトナイト」
第七章

ホワイトナイト68

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「やめて下さい、そういうの……っ!」    
 その濡れたような唇の熱が重なり合った瞬間に、陽介の腕を払いのけ、火がついたように猛は叫んだ。肘にあたって陽介の眼鏡が弾き飛ばされ、宙を舞い、陽介の目が際限まで見開かれる。
「猛……」
 胸の前で手を泳がせる陽介から、猛はさらに距離を取る。

 この一ヵ月間の不安や怒りや焦燥を、キスや愛撫で宥めて誤魔化し、うやむやにする。
 陽介のその男としてのあざとさに猛は言葉を失いながら、問い質すように凝視した。 まさか、どんなに怒って拗ねていても、キスして優しく抱いてやれば大人しくなるとでも思っているのか。
 眼鏡を飛ばされ、唖然としている陽介の顔を見ているうちに、ふつふつ怒りがこみあげてくる。             

「僕なんかそうやって適当に機嫌を取ったら、またすぐ言うこと聞くとか思ってるんだ。陽介さん……」
「……猛、俺は」
「だって、そうじゃないですか! そうやって全部自分の都合のいいように操って! 他人の会社も乗っ取って! 本当は僕のことも皆のことも、腹ん中で笑ってるんじゃないですかっ……!」

 一ヵ月間も放置され、気紛れに戻ってきたと思ったら、都合のいい女のようにあしらわれるだけ。
 結局自分もTOBの戦略として、陽介を救世軍に仕立てるための駒だったのか。都合よく使われていただけなのだろうか。猛は陽介が触れた頬を手の甲で強く拭い、陽介を仇のように睨み据えた。 

 やっと陽介に会えたのに。
 会えてほっとしているはずなのに。ほっとしているからこそ次々堪えきれない悔しさが後から後から噴き出して、言葉より先に涙が溢れる。猛は涙を拭って顔を背け、その場を離れようとした。
「猛っ! 待てって、俺の話も少しは……」
 と、肩を鷲掴みにした陽介の手を咄嗟に払ったその刹那、向き直った視界の先に長身の人影が立ちはだかった。         




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