「ホワイトナイト」
第七章

ホワイトナイト67

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「……猛」         
 人の気配に振り向いた刹那、耳に届いた不機嫌そうな低い声。  
 木の梢から滑り落ちた雪のつぶてが敷石の上で爆ぜて散り、二人の間に溜まって広がる。飛びすさるように振り返った猛は、そのまま四肢を強ばらせ、目の前の男を頭の上から足の先まで視線で往復することしかできずにいた。                 

「さっきから何だ、お前。ずっと呼んでるのに無視しやがって」       
 猛の正面に進み出てきた陽介が、舌打ち混じりに言い放つ。
 それでも身動ぐこともできずにいると、陽介の方から距離を詰め、やがて躊躇うように足を止めた。
「痩せたな、お前……」
 鉛のような沈黙ののち、恐々伸ばされた手が頬に触れる。
 それは猛の頬をおし包み、そそけた肌をいたわるように上下した。
 細い縞模様の濃紺のスリーピースに小紋のネクタイ。袖口に光る黒蝶貝のカフリンクス。シルバーフレームの眼鏡をかけた陽介は、今見た雑誌の中から抜け出てきたかのようだった。

 「悪かった。……ずっと連絡できなくて」  
 猛の頬を撫でながら、陽介の眉が身体の痛みを堪えるようにひそめられる。
 だが、十年ぶりに再会をはたした時のように、どうしていいのかわからない。ただ心臓だけが激しく鼓動を打ち鳴らし、気づいた時にはたぐるようにかき寄せられて身体が傾いだ。         

「TOBは情報戦だ……。仕掛けるまでは、誰とも何も話せなかった。だから、お前が連絡取りたがってるのはわかってたけど、メールも何もしてやれなかった。心配させて本当にすまなかった。悪かった……」       
 呻くように何度も詫びて抱きすくめ、髪に頬に唇を強く押しつけてくる。
 木偶のように強ばる身体を、もどかしそうに抱き直す腕。
 厚い胸の硬さや熱にも猛は反応できずにいた。まだ、いつ醒めてしまうかわからない夢の間をたゆたうように惚けていると、頬に触れた唇が唇にまで降りてきた。   




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