「ホワイトナイト」
第七章

ホワイトナイト65

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スマホの電源を切って、ソファの背もたれに身体を預けた猛は、嘆息しながら天井を眺めた。  
 どんな戦も、勝つための旗印が必要だ。
 戦国時代の武将らは、戦の折には必ず天皇という錦の旗印を掲げ、自らこそが官軍であることを知らしめてきた。

 同じように陽介が芹沢会長を挑発したのも、最初から芹沢会長を賊軍の将とし、自分達を官軍たらしめる戦略だったに違いない。
 自分の妄想にぞっとしながら、思わず身体を起こしていると、山岸が外回りから戻ってきた。               

「こんなものまで出てましたよ」
 山岸は真新しい経済雑誌を猛に差し出し、苦笑いして眉を下げた。
 その表紙には、チャコールグレーのスーツにチェリーレッドのネクタイを締め、縁のない細い眼鏡をかけたスタイリッシュな陽介が、まるでアイドルのグラビアのように収まっている。

 雑誌のトップに特集を組まれた陽介へのインタビューでは、自身が芹沢製薬の買収に成功した暁には、いかに人員削減を行なわずに、芹沢製薬の技術力を生かしながら新薬の開発と販売ルートの拡大に力を注ぎ、営業利益をあげていくかを力強く語っていた。 
 既に勝者の貫禄まで醸し出し、買収後の展開まで雄々しく述べる陽介はまさに時代の寵児と言えるだろう。

「僕。……ちょっと外に出てきます」
 猛は雑誌の表紙を力なく閉じ、一人で事務所を後にした。

 裏庭の遊歩道をとぼとぼ歩き、途中で道を右に折れ、突き当たりにある土蔵まで来て石段の上に腰をかける。
 午睡の柔らかな陽射しが庭の樹木にふり注ぎ、敷石に淡い影を落としていた。猛は澄み渡る冬晴れの空をぼんやり見上げて、ため息を吐いた。     

 もしかしたら陽介は、自分が思っているような人間ではないのかもしれないという、微かな疑念が頭の中から離れなかった。
 もちろん、芹沢製薬の独裁的な支配から地元企業を解放するため、陽介が経営権の獲得に乗り出した経緯は理解している。             
 だが、それですら乗っ取りの名目にされたと言えなくもない。
 本当は、目的のためなら平気で他人を罠にはめる悪徳ファンド。それが陽介の正体だったのか。      


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