「ホワイトナイト」
第七章

ホワイトナイト64

 ←ホワイトナイト63 →ホワイトナイト65
「まさか、こんなインタビューに答えたりしてないよね?」
 猛は房子を睨んで問い質す。   
 ただでさえ猛もコメントを求められ、昼夜問わず旅館の前に報道陣が押しかけてきて、宿泊客に煩わしい思いをさせているのだ。猛が眉間に皺を寄せると、房子は大きな声で否定した。

「してませんよ、そんなこと」
「芹沢製薬はうちのお得意様だったんだから。お客様の不利になるようなことは、絶対言わないようにって、他の従業員にも徹底して指導してよ? 房子さんは女中頭なんだから」      
 猛にきつく言い置かれ、しょげ返った房子の肩越しにテレビ画面が切り替わる。今度は同様に嫌がらせを受けた居酒屋として、森下がワイドショーのインタビューを受けていた。  

「芹沢製薬と取引のある会社から宴会のキャンセルを直前にされたり、食材の仕入れを拒まれたりとか。もう、数えきれないぐらいありますよ」
 森下はこれまでどんなに露骨でえげつない嫌がらせをされたかを、顔も隠さず嬉々として訴え続けていた。
「森下さん。後でまた、絶対陽介さんに叱られるって……」                
 森下の店も、芹沢製薬の社員が利用したことがないとは言い切れない。
 だとしたら、やはり公の場で客を悪く言うのはやめろと、陽介だったら言うだろう。そして恨み節なら俺に全部聞かせろと、森下の肩を抱き寄せていたに違いない。

 無意識のうちに陽介の声や面影を脳裏に描いて目を伏せていると、房子がぽつりと呟いた。
「うちも言ってやったらいいのに」
 と、お茶を啜って不貞腐れている。                         
「そういう話は僕が聞くから。外ではしないようにって、房子さんから仲居さんにも言ってくれる?」
 猛は宥めるように微笑んで、湯呑みを片手にスマホを繰った。  

 陽介のTOBの期間は、通常よりもかなり短い三週間だ。
 外資を極端に毛嫌いしている日本の市場で、外資の商社に資金提供されながらの敵対的買収が成功する率は極めて低い。 

 にも関わらず今回は、陽介側が芹沢製薬から執拗な嫌がらせを受けた結果の、『正当防衛としての買収策』というマスコミへの触れこみが功を奏したと言っていいだろう。
 無名ファンドと外資による買収という、二重のデメリットをものともせずに、芹沢製薬の株は陽介側に傾れこんでいるらしい。 


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
にほんブログ村 BL小説

小説投稿サイト【 カクヨム 】でも、
『東京ラプソディ』という、昭和初期のカフェーを舞台にした、レトロなBLを書いています。
東京ラプソディの【 カクヨム 】ページは→ こちら から
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png ホワイトナイト
総もくじ 3kaku_s_L.png ほんとのことを言ってくれ
総もくじ 3kaku_s_L.png 夜のギヤマン
総もくじ 3kaku_s_L.png 死か降伏か
総もくじ 3kaku_s_L.png 咲かない桜の桜守
総もくじ 3kaku_s_L.png 向かい風を行く
もくじ  3kaku_s_L.png 電子書籍関連
総もくじ  3kaku_s_L.png ホワイトナイト
総もくじ  3kaku_s_L.png ほんとのことを言ってくれ
総もくじ  3kaku_s_L.png 夜のギヤマン
総もくじ  3kaku_s_L.png 死か降伏か
総もくじ  3kaku_s_L.png 咲かない桜の桜守
総もくじ  3kaku_s_L.png 向かい風を行く
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
【ホワイトナイト63】へ  【ホワイトナイト65】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 現在非公開コメン卜投稿不可です。
  • 【ホワイトナイト63】へ
  • 【ホワイトナイト65】へ