「ホワイトナイト」
第七章

ホワイトナイト63

 ←ホワイトナイト62 →ホワイトナイト64
翌朝から陽介の会社を報道陣が取り囲み、異様な興奮に包まれていた。     

 脚立を立てて陽介の事務所を撮影する者。
 生中継するキャスターにカメラを向けるテレビクルーも、既に十数社にまで及んでいた。開店準備をすすめる人も通学していく子供達も驚愕の目を向け、人垣を覗きこんでいく。      

 国内ではそこそこ名の知れた老舗企業に喧嘩を売った無名ファンドという、わかりやすい構図はニュースだけでなく、ワイドショーでも連日のように取り上げられている。
「まだ二十代の若さで世界のトップメーカーを股にかけて、数百億ってお金を左から右に動かしてるんですからねえ」
 昼帯のワイドショーでは陽介の経歴から端麗な容姿についてまで、新人タレントのように特集が組まれた。男性MCが遠い目をして呟けば、女性コメンテーター達が目の色を変えて喚きたてる。

「しかも、この経歴でイケメンですよ? 若くて仕事ができて億万長者でイケメンって、そんな日本人がまだいたなんて信じられます? この不景気に」
 房子と二人で事務所で昼食をとっていた猛は、色めきたった女性コメンテーターから目を逸らし、物憂く深いため息を吐いた。       
 陽介の所在は明らかになったものの、相変わらず連絡はない。        
 自分もしていないとは言え、こういう非常時に陽介にとって自分は本当に物の数ではないのだと、身に染みて思い知らされた気さえした。箸も進まず、嘆息ばかりをくり返していると、房子が猛に耳打ちをする。    

「何か、芸能人みたいですねえ。陽介さん」  
 房子は付箋を張った週刊誌を、わざわざ開いて猛に見せた。
「ほら、これなんか、全部芹沢会長が指示したんじゃないかって。うちがされた嫌がらせのこととか記事になってるんですよ」                
 猛は見せられた記事に驚いて、思わず房子からそれを奪い取る。   
 まさに狙い定めたようなタイミングで発売された週刊誌には、陽介と取引のある店舗や陶芸作家などへの貸し渋りを芹沢会長から命じられたり、取引を中止させられたりした、などの記事が詳細に暴露されていた。 


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
にほんブログ村 BL小説

小説投稿サイト【 カクヨム 】でも、
『東京ラプソディ』という、昭和初期のカフェーを舞台にした、レトロなBLを書いています。
東京ラプソディの【 カクヨム 】ページは→ こちら から
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png ホワイトナイト
総もくじ 3kaku_s_L.png ほんとのことを言ってくれ
総もくじ 3kaku_s_L.png 夜のギヤマン
総もくじ 3kaku_s_L.png 死か降伏か
総もくじ 3kaku_s_L.png 咲かない桜の桜守
総もくじ 3kaku_s_L.png 向かい風を行く
もくじ  3kaku_s_L.png 電子書籍関連
総もくじ  3kaku_s_L.png ホワイトナイト
総もくじ  3kaku_s_L.png ほんとのことを言ってくれ
総もくじ  3kaku_s_L.png 夜のギヤマン
総もくじ  3kaku_s_L.png 死か降伏か
総もくじ  3kaku_s_L.png 咲かない桜の桜守
総もくじ  3kaku_s_L.png 向かい風を行く
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
【ホワイトナイト62】へ  【ホワイトナイト64】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 現在非公開コメン卜投稿不可です。
  • 【ホワイトナイト62】へ
  • 【ホワイトナイト64】へ