「ホワイトナイト」
第六章

ホワイトナイト58

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確かに唇はカサカサに乾いて薄皮が捲れ、血色の悪い頬には吹出物もできている。     
 陽介と連絡がつかなくなってからというもの、一日も休みを取っていない。そのうえ日付が変わる前に帰宅した日は一度もなかった。
 身体が悲鳴を上げているのはわかっていた。けれど、仕事で気を張ってでもいなければ、足元から砂山のように崩れてしまいそうだった。     

 年始の挨拶をかねて、猛は今日も利き酒会への出展依頼に隣県の蔵元まで足をのばした。そして、いつものように終電列車に揺られたのち、タクシーで彦坂旅館に乗りつけた。 
「……ただいま」            
 と、形だけの挨拶を口にして、事務所のドアを押し開ける。 
 正月早々こんな深夜にスタッフが残っているはずもなく、夜食にカップラーメンでもと算段していた時だった。

「お帰りなさい。いつも遅くまでお疲れ様です、猛さん」
 事務所の奥の給湯室から房子がにこにこしながら顔を出し、帰宅した猛を労った。しかも、事務机の上にうず高く積まれた書類や本の影から山岸も顔を覗かせる。
「お疲れ様です。今日は雪で電車が止まったそうですけど、大丈夫でした?」 
「僕が使った路線の方は大丈夫だったけど。でも、二人ともどうしたんですか?」     
 年代物の柱時計に目をやれば、もう午前零時をまわっていた。 

 自分の留守中に何かトラブルでもあったのだろうか。猛は顔を強ばらせたが、山岸は頭の横に古びた帳簿を掲げて言った。   
「私はこれの整理をしてたもんですから」
「帳簿の整理ですか?」
 しかし、決算期でもないのに正月早々深夜に及んでするような仕事ではない。猛が更に訝っていると、房子が三人分のお茶と茶請けを盆に乗せて運んできた。


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