「ホワイトナイト」
第六章

ホワイトナイト56

 ←ホワイトナイト55 →ホワイトナイト57
 大晦日から降りつづいた雪も明け方には止み、今年は雪を頂く木曽山脈から昇る初日を拝めたと、ロビーで宿泊客が歓喜している。  
 初日の出から戻った客も初詣から帰った客も、氷点下まで落ち込んだ外気の冷たさに顔を赤らめ、暖炉の前に直行する者。旅館のスタッフがふるまう樽酒に群がる者と、元旦の彦坂旅館は初春の慶びを分かち合う人々で華やいでいた。

「あけまして、おめでとうございます」
 猛もいつもは無難な色目のスーツだったが、今日ばかりは鴬色の御召に同系色の羽織という正月らしい格式のある着物姿で客をもてなす。特に外国人観光客には好評で、グラビアアイドルの撮影会よろしく囲いこまれて写真を撮られた。
 中には、
「写真、送りたいから 連絡先教えて」
 などという常套を吐き、つきまとってくる輩もいる。しかし、相手は宿泊客で、邪険にはできない。もの慣れない猛が断りを入れるのに四苦八苦していると、望月に声をかけられた。         

「明けましておめでとう、猛君。僕にも一枚撮らせてくれる?」
「明けましておめでとうございます、望月さん」   
 ちょうど良かった。助かった。 
 猛は胸の中でひとりごちて、しつこく言い寄ってくる欧米人の中年男に会釈を残し、望月の傍へ駆け寄った。しかし、望月は撮ったばかりの写真画像を猛に見せて、ほくそ笑む。 

「可愛い若旦那が口説かれてるの図」
「いつ撮ったんですか、こんな写真。仕事に関係ないでしょう」
 酒に酔った赤ら顔の大男に肩を抱かれ、頬にキスされているツーショット写真を見せつけられて、猛は憮然と抗議する。取り上げようと手を伸ばしても、にこにこしながら身を躱されて埒があかない。
 相変わらず食えない人だと嘆息すると、望月が口元をほころばせたまま双眸を細める。  

「なんか顔色悪いよね。体の調子は大丈夫?」
 言いながら猛の頬を指の背で撫で、気遣わしげに眉をひそめた。


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
にほんブログ村 BL小説

小説投稿サイト【 カクヨム 】でも、
『東京ラプソディ』という、昭和初期のカフェーを舞台にした、レトロなBLを書いています。
東京ラプソディの【 カクヨム 】ページは→ こちら から
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png ホワイトナイト
総もくじ 3kaku_s_L.png ほんとのことを言ってくれ
総もくじ 3kaku_s_L.png 夜のギヤマン
総もくじ 3kaku_s_L.png 死か降伏か
総もくじ 3kaku_s_L.png 咲かない桜の桜守
総もくじ 3kaku_s_L.png 向かい風を行く
総もくじ 3kaku_s_L.png 一緒にいようよ
もくじ  3kaku_s_L.png 電子書籍関連
総もくじ  3kaku_s_L.png ホワイトナイト
総もくじ  3kaku_s_L.png ほんとのことを言ってくれ
総もくじ  3kaku_s_L.png 夜のギヤマン
総もくじ  3kaku_s_L.png 死か降伏か
総もくじ  3kaku_s_L.png 咲かない桜の桜守
総もくじ  3kaku_s_L.png 向かい風を行く
総もくじ  3kaku_s_L.png 一緒にいようよ
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
【ホワイトナイト55】へ  【ホワイトナイト57】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 現在非公開コメン卜投稿不可です。
  • 【ホワイトナイト55】へ
  • 【ホワイトナイト57】へ