「ホワイトナイト」
第六章

ホワイトナイト55

 ←ホワイトナイト54 →ホワイトナイト56
「こちらにご用意した食材は、全部サービスなんですよ。良かったら自由に焼いて召し上がって下さいね」
 猛が示した囲炉裏端のテーブルには、串に刺したひと口大の切餅や団子、マシュマロやチーズなどの食材が大皿に盛られ、ずらりと並べられている。
「太っ腹だなあ。これ全部サービスなの?」
「どれだけ召し上がって頂いても無料ですけど、夕食に響かない程度にして下さいね」   
「大丈夫。こちらの料理は本当においしいからね。間食で腹いっぱいで食べられないなんてもったいないことしないから」

 望月は嬉々として囲炉裏の前に腰を下ろし、早速草餅の串を炙り始める。
 同時に人懐こい彼らしく、周囲の宿泊客にも話しかけ、まめに写真に収めている。談笑する望月の楽しげな姿を目端にしながら、猛はフロント業務に勤しんだ。

『年末から正月明けまで泊まれる部屋の空きはないか』                  
 と、望月に打診されたのは一週間ほど前のこと。  
 当然部屋の空きはなかったが、猛は咄嗟に切り返していた。

「陽介さんが来客用に貴賓室をキープして下さってるので、もし陽介さんの承諾が得られれば、そちらのお部屋にご案内できるかと思うんですけど。難しいようでしたら、生憎お部屋の空きがございませんので」       
 カマをかけるつもりで言うと、陽介の事務所はその日のうちに、構わないとの返事を寄越した。
 どう考えても、望月は陽介が部屋をキープしていることを知っていて、その上で打診をしてきたはずだった。

 もし断られたら、『陽介がキープしている貴賓室』への宿泊を事前に許可されていたと言えばいい。陽介が綾と二人で姿を消したのも、代わりに望月がやって来たのも、全てが予定調和のようだった。 

 ただ、それが暗黙の了解のように、望月は陽介の話を一切しようとしなかった。 
 だから、あえて何も訊ねなかった。 
 望月のように、そして綾のように自分も陽介に必要とされたかった。けれど、今の陽介に 『呼ばれもしない』自分はきっと、必要以上に干渉すべきではないのだろう。
 
 猛は陽介の帰りを待つことしかできない自分に苛立ちながら、同時に半ば諦めてもいた。


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
にほんブログ村 BL小説

小説投稿サイト【 カクヨム 】でも、
『東京ラプソディ』という、昭和初期のカフェーを舞台にした、レトロなBLを書いています。
東京ラプソディの【 カクヨム 】ページは→ こちら から
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png ホワイトナイト
総もくじ 3kaku_s_L.png ほんとのことを言ってくれ
総もくじ 3kaku_s_L.png 夜のギヤマン
総もくじ 3kaku_s_L.png 死か降伏か
総もくじ 3kaku_s_L.png 咲かない桜の桜守
総もくじ 3kaku_s_L.png 向かい風を行く
総もくじ 3kaku_s_L.png 一緒にいようよ
もくじ  3kaku_s_L.png 電子書籍関連
総もくじ  3kaku_s_L.png ホワイトナイト
総もくじ  3kaku_s_L.png ほんとのことを言ってくれ
総もくじ  3kaku_s_L.png 夜のギヤマン
総もくじ  3kaku_s_L.png 死か降伏か
総もくじ  3kaku_s_L.png 咲かない桜の桜守
総もくじ  3kaku_s_L.png 向かい風を行く
総もくじ  3kaku_s_L.png 一緒にいようよ
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
【ホワイトナイト54】へ  【ホワイトナイト56】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 現在非公開コメン卜投稿不可です。
  • 【ホワイトナイト54】へ
  • 【ホワイトナイト56】へ