「一緒にいようよ」
第四章

一緒にいようよ 49

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「大体ちょっと目え離したら、
すぐ別の男連れ込む奴を置いて行けるか? 五年間も」
「……剛志」
「そりゃあ教え子なんだし、アンジーのことは可愛いよ。
だけど、その可愛いは、この可愛いとは全然意味が違うだろ」
苦笑いした剛志の声音に微かに甘い響きが混じる。
剛志の右手が頬に触れ、微動だにしない咲をあやすように上下した。

「まあ、日本校の話が出たのを黙ってたのは謝るよ。
……だけど、あんまりあっさり咲に『行け』って言われてさ。
ちょっと拗ねて、いじめてた」
「いじめてた……って」
打ち明けながらもはにかむ剛志を、咲は惚けたように眺めていた。
わざと黙っていたことを知らされた後も怒りより、
剛志がアンジーの恋人じゃなかった安堵の方が大きくて、
すぐには言葉が出なかった。       

しかも、どうしたら一緒にいられるのかを剛志が考え続けてくれていた。
自分が躊躇し、足踏みしていた間にも、剛志は奔走してくれた。
咲の円らな双眸に大粒の涙が溢れ出し、頬を伝い流れ落ちる。
「ありがとう。……剛志」
やっとのことで声を出すと、身体の奥から震えがこみ上げ、
言葉が涙に溶かされる。
そうして息を凝らして見つめる咲に、剛志は照れたように笑み崩れ、
頬の涙を親指の腹で拭い取る。

「ほんとに嬉しい? 俺が残って」
「嬉しいから、こんな泣いてるんだろう」
間近に顔を寄せてきた剛志があんまり嬉しげで、
癪に触った咲はつい、尖った声で言い返した。

「だけど、咲はイギリス行きたいんじゃねえのかよ」   
「……えっ?」
「だって、午前中にアンジーの親父さんからメール来てさ。
『剛志の友達の咲が、
日本伝統の鍛冶技術をイギリスで教えたいと言っている。
剛志の意見を聞かせてくれ』って言われたから。
俺は、『だったら、俺と一緒に日本校の講師として雇ってくれたら俺も嬉しい』
って、返事したけど」
 
問い詰めながらも悪戯っぽくほくそ笑み、剛志が答えを目顔で促す。
咲は剛志の肩を拳で叩き、ヤケクソのように怒鳴りつけた。
「そんなのお前がイギリス行くって言ったからだろ! 
お前が日本に残るのに、なんで俺だけイギリス行かなきゃならない……っ」
と、語気を荒げた時だった。
上から被さるように無言で剛志にかき寄せられ、
息も言葉も呑み込んだ。


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