「一緒にいようよ」
第一章

一緒にいようよ 2

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「タラノメって何? 咲。見せて見せて」 
と、剛志の腕に腕を絡め、アンジーが満面の笑顔で寄って来る。 
「ああ。ここにあるから、剛志に採ってもらったら?」
すっかり我が物顔のアンジーに、咲は眉間を曇らせて言う。
思わず口調も刺々しくなり、慌てて周囲を見回した。

だが当のアンジーも、剛志ですら気にする様子は見られない。 
こちらの不機嫌丸出しの声にすら気づいていない二人に、
追いうちをかけられる。 

やはりアンジーぐらい綺麗なら、その気になってしまうのか。
懐かれれば悪い気はしないのか。
咲は自分の小造りな顔に薄茶色の腰のない髪。奥二重の地味な双眸。
ほっそりとした女性的な鼻筋や小さな唇。
高校二年で止まったままの身長や、
二十四歳の年相応の男の色気も貫禄も何もない自分自身の童顔を
無意識のうちに脳裏に描き、肩を落として嘆息する。

別にアンジーとルックスで張り合うつもりはないけれど。
張り合う意味もないけれど、
自分一人がヤキモキしながら取り残されていくようで気が滅入る。
疎外感を深めた咲は、
二人を残していじけるように春の日が射す伐採跡を出て行った。

林道脇の草叢に蕨やこごみを見つけては、
アンジー達を引率してきた教員のニックや他の学生達にも摘ませてやる。
「イギリスは山菜採りはしないんだよね?」
「しませんねえ。イギリスではハーブも自宅の庭で育てますから」
教員のニックも大の日本好きで、今回は通訳兼引率役を担っている。

グレーのスラックスに白いシャツと、胸ポケットに端を入れたブルーのネクタイ。
このまま教壇に立っていても遜色のない出で立ちで、
ワラビやこごみを摘んでいた。 
几帳面な性格はオールバックに撫でつけた髪や、怜悧な眼差し。
華奢な眼鏡のブリッジを人差し指で押し戻す癖にも垣間見られる。 

「そういえば、日本は山菜を自分で栽培するってないかもなあ。
日本人にとって山菜を採って食べるっていうのは、野生の芽吹きのパワーを貰う感覚だから」   
「なるほど。そうなると一種の儀式ですね」
「そうそう。剛志なんか、絶対俺に食えって言うもん。
春に山菜食っとけば、一年病気しないって」
 
咲は幼馴染みの年寄臭さを笑い話にしながらも、本音を言えば、
その気遣いが嬉しくもある。
面映ゆくなって目を細め、
ニックと見つめ合いながら首をすくめた時だった。
「咲」          
という咎めるような声がして、飛び上がるように振り向くと、当の本人が立っている。


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