「向かい風を行く」
最終章

向かい風を行く 最終話

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「メンズなのに、こんなにがっつりやるんですか?」
「メンズメイクは肌荒れとかシミを隠して清潔感をアップさせるのが目的だから。
ベース作りは、しっかりやる。
しっかりやるけど、メイクしてるってわからないようにやらないといけないし」
美貴に説明しながらも、
甲斐にも言い聞かせているように視線を転じた榊原は、
一瞬でプロの顔になっていた。
そんな彼に必死に食らいつく甲斐の仕事ぶりを静かに観賞していると、
甲斐が湯気の立つ紙コップを持って来た。

榊原は本当に分刻みで忙殺されているらしく、
腕時計に目を落とし、「後は任せた」と甲斐に言い、足早にメイク室を出ていった。

「ブラックで良かったですよね?」
「うん、ありがとう」
「疲れませんか? 大丈夫?」
「大丈夫だって。俺は座ってるだけだしな」
美貴はコーヒーをひと口啜り、鏡に映る恋人の姿を目で追った。
 
もう、楽をしようとは思わない。
そう言って自分の手を取ってくれた甲斐となら、歩いていきたい。これからも。
どうしようもないぐらい壁や距離を感じることがあったとしても。
ゲイじゃないから、わかり合えないと思っても。
 
美貴の視線に気づいた甲斐に鏡越しに微笑まれ、美貴もつられて微笑した。
「榊原さんにちょっとだけヨシキさんの前髪切ってって言われたんですけど、
いいですか?」
甲斐は美貴の背面にまわり込み、美貴の前髪を手で軽く梳き流す。
「じゃあ、いいよ。切ってくれて」
「もしかして、これ。俺が切った後、全然切ってないですか?」
「うん。そろそろ切りたいと思ってたとこ」
美貴にカットクロスを巻きつけて、髪の断面を黙視する甲斐は妙に嬉しげだ。

「そんなん、わかるの?」
「わかりますよ。だって、自分のカットの癖がありますから」
嬉しげに口角を上げたまま、甲斐が傍らから美貴の顔を覗き込み、
前髪にハサミを入れ出した。
切られた髪が鼻先をかすめて降り始め、美貴は顎を引いて目を閉じる。
すると、顔の前でふわりと甲斐の匂いがして、
啄ばむようにキスされた。


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エブリスタでも『天下分け目のBL合戦』企画にプラチナ文庫様『ピュアラブ』部門で連載中。
舞台は京都。お香屋さんの一人息子(大学生)が主人公。
特殊な五感の少年と、チャラ男刑事の間で主人公が揺れまどう話です。
一応ピュアラブで、なんかほのぼの。
だけど、次々事件が起きるサスペンスタッチ。いつものようにいろんな意味でごった煮のBLです。
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