「向かい風を行く」
最終章

向かい風を行く 78

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「こいつ、結構嫉妬深いから大変だよ。ふらふらしてると、そのうち監禁されるかも」
甲斐は慌てて榊原を制したが、榊原は構わず甲斐をからかった。
iかなり前から榊原にだけはゲイだと打ち明け、榊原には自分達の話もしたいと、
美貴も甲斐に言われていた。
甲斐がそうしたいというのなら、断る理由は何もない。
甲斐は榊原から付き合ってくれと告白され、交際自体は断ったものの、
師弟関係も気の置けない関係も、継続しているようだった。

甲斐に腹を割って話せる相手がいるのは喜ばしいことのはずなのに。
甲斐が自分より榊原と話している時の方が楽しげで、
おもしろくないと美貴は思ってしまう。

「……にしても、ミキ君。本当に肌が綺麗だなあ。毛穴なんか見えないじゃん」
榊原は甲斐がヤキモキするのを楽しむように美貴の頬を撫で擦り、
鏡越しにちらりと甲斐を窺った。
榊原は、感情を剥き出しにする甲斐も可愛くて仕方がないといった顔つきだ。
自分をダシにして、いちゃついてるのは完全に榊原と甲斐の方だ。
後で甲斐に説教してやると、美貴が内心むくれていると、
廊下からドアをノックされ、スタッフらしき女性に甲斐が呼び出され、部屋を出る。

「甲斐もそこそこやれてるみたいですね」
美貴は後ろ手にドアを閉める甲斐を目で追った。
その呟きに応えるように、榊原がにっこり微笑んだ。
「よく気がつくし、礼儀正しいし。腕もいいから助かるよ」
榊原はメイクの前に肌に水分補給すると言い、美貴の顔に機械で水蒸気を
あて始める。
「それに、あのルックスだし。アシスタントが甲斐の日の撮影だと、
モデルの女の子達もはりきってセクシーポーズ、ばんばん取ってくれるから。
いい写真撮れるって、カメラマンも編集も喜んでる」
「……その情報、別に要りません」
「そうだよねえ」

鏡に映る榊原は相変わらず食えない笑顔のままだった。
目鼻立ちのすっきり整った、悔しいぐらいのイケメンだ。
無造作風に計算され、整えられた前髪からちらりと覗く双眸は、
目尻が少し垂れていて、滴るようなフェロモンを放っている。

恋仇に平然と喧嘩を売りながら、そのくせ決して険悪モードには持ち込まない。
こんな恋愛慣れした百戦錬磨の榊原に、
自分なんかが太刀打ちできるはずがない。 
ここは大人しく榊原のオモチャにされておこうと腹を決め、
美貴は肩で息を吐く。

本当は甲斐の仕事ぶりが見たくなり、引き受けてしまった代役だ。
想像以上にテキパキしている甲斐の姿を脳裏に浮かべ、思わず頬を緩めると、
榊原が伏し目がちに呟いた。


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エブリスタでも『天下分け目のBL合戦』企画にプラチナ文庫様『ピュアラブ』部門で連載中。
舞台は京都。お香屋さんの一人息子(大学生)が主人公。
特殊な五感の少年と、チャラ男刑事の間で主人公が揺れまどう話です。
一応ピュアラブで、なんかほのぼの。
だけど、次々事件が起きるサスペンスタッチ。いつものようにいろんな意味でごった煮のBLです。
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