「向かい風を行く」
第六章

向かい風を行く 62

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「なんでそんな、自信満々なんですか」
顔を伏せた甲斐が、唇を横に引くように空虚に笑んだ。
ほとんど嘲笑に近かった。
「えっ……?」
「するなら、ヨシキさんがネコですよ? わかっていますか? その意味も」
何かの迷いを振り切るように顔を上げ、はすに構えて美貴を見た。
はらりと乱れた前髪が整った鼻梁や知的な目元に落ちていた。
まるで挑発するように、袢纏はんてんの袖をまくり上げ、
胸の前で腕を組む。
程よく筋肉のついた腕が顕わになり、美貴は急にドキリとした。
甲斐の肉体を生々しく感じた戸惑いと気恥ずかしさ、
不穏な予感が胸の中で渦を巻く。
こんなに甲斐に上から目線で告げられたのは初めてで、
見えない圧すら感じていた。

真面目な甲斐らしくない荒んだ口調と、睥睨するような冷めた眼差し。
セックスの話をした途端、
皮肉な態度に豹変したのは、なぜなのか。
美貴は無意識に腰を引き、目顔で甲斐に問いかけた。
だが、甲斐はあえてのように口を噤み、美貴の右手に触れてきた。

「……していいって言うんならしますよ、そりゃあ。こんな可愛い人が言うんだし?
俺も男ですからね」
「甲斐……」
美貴の手を握りしめた甲斐の目つきは別人だ。
背筋が冷やりとするほどに。
手頃なオモチャを見つけたような目で萎縮する美貴を見て、片眉を上げている。
焚きつけるようにあざとく笑う甲斐の本心がわからない。

美貴はこれがあの甲斐なのかと息を凝らし、
掴まれた手首に目を落とす。
夜風に吹かれたせいなのか、凍えたように冷えている。
それでいて大した力も感じない。
馬鹿にするなと払い除け、突き飛ばすこともできる程度の握り方。
それが美貴を迷わせる。


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