「向かい風を行く」
第六章

向かい風を行く 60

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「だけど、僕みたいなゲイと付き合ったことないはずですよね? ヨシキさん」
咎めるように指摘され、美貴は目尻を険しく吊り上げる。
「ないよ。ないけど、だったら何なんだよ」
呑みかけの缶ビールを木製ベンチに置き、荒んだ口調で言い返す。
負け試合だとわかっていて、無駄にあがいている。
届かない、届かないと喚いている。
缶の底をベンチに叩きつけ、そんな自分に歯噛みした。
美貴は不貞腐れて俯いた。
往生際が悪すぎる。
そんな気がして帰ろうと、口にしかけた時だった。

「だから言えるんじゃないんですか? そんなこと。
何にもわかっていないから、そんな簡単に男同志で好きなんて」
「……簡単?」
聞き捨てならない一言に美貴は語尾を跳ね上げた。
弾かれたように立ち上がり、ずかずかと甲斐の目の前まで近づいた。
長身の甲斐に真上から見下ろされ、美貴は火のような怒りに駆られていた。

簡単じゃない。
ここまで来るのに簡単だった訳じゃない。
いきり立つ美貴に甲斐もまた挑むように顎を上げ、美貴の反論を待っている。
美貴は唇を開きかけ、思いとどまり、また閉じる。
心が冷たい汗をかいている。
ほら、何か言えるものなら言ってみろ。ガラスのような目で甲斐が脅している。

「わかってないって……、じゃあ、何が?」
食ってかかったつもりでも、声が喉に引っかかる。
言いながら、どうしてこんな水掛け論になるのかと、美貴は空しく苛立った。
踵を返してベンチへと逃げ帰り、
ヤクザのようにどっかりと股を開いて腰かける。
付き合うつもりがないのなら、そう言ってくれればいいのにと、
胸の中で毒づいた。
加速度的にイライラが増し、前髪をかきむしる。

なのに、甲斐は何かもの言いたげに眉を寄せ、押し黙っているだけだ。
「……いいよ。わかった」
美貴は気の抜けたビールを呑み干して、缶をくしゃりと踏みつぶす。


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