「向かい風を行く」
第六章

向かい風を行く 58

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「じゃあさ。どんなのがタイプなんだよ、 お前って。可愛い系? クール系?」
「……ヨシキさん」
「年上は駄目とか。……年下の方が、やっぱいい?」
薄暗く、誰もいない山の中腹の展望台。
背後で甲斐も立ち上がる気配がした。
美貴はようやく観念し、大きな溜息をひとつ吐いた。手の内のカードを
全部見せることにした。

今更何を言っても無駄だということは、わかっている。
このまま何も言わずに別れたら、来年もまた今年のように一か月間、
甲斐と一緒に手筒花火の準備から奉納まで楽しめるだろう。
気兼ねなく。
帰り道では甲斐が通うラーメン屋に寄り、飯を食ったりできるはず。
何も言葉にしなければ未来は続くかもしれない。
一年間待ってさえいれば、また会える。

美貴の中で未来に希望を託すのか、
それともここで思いの丈をぶちまけて、粉々に砕けて終わるかで、
ほんの一瞬葛藤し、二人の自分が争った。
挙句に未練の方が勝ちを占めた。
誰にも獲られたくないからだ。

今年甲斐に会えるのは今夜で最後だ。
祭りが終わってしまったら、もう甲斐は連絡なんてしてこない。
だから尻に火がついたように焦っていた。
榊原だって甲斐を虎視眈々と狙っている。
それなのに一年間も悠長に待ってなんていられない。

どうしたら甲斐を引き止めることができるのか。
先輩ではなく恋人として、だ。でなければ何の意味もない。
今夜何ひとつ本当のことを言わないまま、じゃあ、また来年と笑い合い、
手を振り合って別れるなんて、もうできない。
だって、こんなにも好きなのに。
明日にでもまた会いたいのに。

美貴は黙り込んだままの甲斐を恐る恐る振り向いた。
甲斐も問い質すように美貴を見つめ返していた。
きつく眉根を寄せた甲斐は、真意を図りかねているようで、
それでいて、ひどく怒っているような顔にも見えた。美貴には。


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