「向かい風を行く」
第六章

向かい風を行く 55

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右腕の藍の袢纏はんてんの布越しに伝わる甲斐の身体の熱。
意識し出すと、もう駄目だ。
どうしようもないぐらい鼓動が早鐘を打ち始め、顔を見ることもできなくなる。
美貴は火花を咲かせる線香花火の先だけ、息を殺して見つめていた。
「……あっ、落ちた」
やがて視線の先で火の玉が落ちて、美貴は渋々腰を上げた。

それでも二本目に火を点けて、再びしゃがんだ時もまた、それとなく甲斐に密着した。
「お前、巧いな。さっきから全然落ちねえじゃん」
「動かさなければ落ちないですよ」

こんなにぴったりくっついて、何か変だと思われていたらどうしよう。
気持ちが悪いと思っても、言えずにいるだけかもしれない。
内心ビクビクしていたが、腕でも肩でも甲斐に触れていたかった。
万が一、
「暑いです」
などと、甲斐に口実を作られて、
それとなく距離を置かれても、線香花火の火花は風に弱いから。
風よけのために並んだだけだ。
くっついたのは、その為だ。
美貴は甲斐にも自分にも心の中で言い訳した。

甲斐も一瞬ビクリとしただけで、
よけたりせずに花火をじっと見つめている。
「……あのさ、お前」
美貴も四方に広がる可憐な火花を見たまま言った。
「付き合ってる奴とかいるの? ……好きな子とか」
「えっ……?」


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