「向かい風を行く」
第六章

向かい風を行く 54

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「でも、やっと手筒花火が終わったのに、なんでまた花火なんですか?」
甲斐はコンビニで買った子供用の手持ち花火にライターで点火しつつ笑っていた。
外灯の下から移動して、薄闇の中、白光色の火花を噴出させている。
美貴も缶ビールを手にしたまま、手持ち花火に火を点けた。
「うちの青年団の伝統なんだよ。まあ、祭のシメの花火だな」
「シメ花火ですか?」
「そうそう。だって、最後は遊びたいじゃん」
 
死と隣合わせの緊張感から解放され、花火そのものを愛でる時間。
赤や緑の火の玉を連射する打ち上げ花火や笛ロケットを楽しんで、
美貴は爆竹にも火を点けた。
それを直足袋の足で踏みつけて、火薬が弾ける感触を足の裏で味わった。
「ヤンチャだなあ」
甲斐は苦笑していたが、声音は慈しむように優しげだ。
その後もススキ花火を向け合って、子供みたいに逃げ惑う。

そんな甲斐の弾けるような笑い声。
年相応に屈託のない無邪気な甲斐を見ていると、何だか胸が熱くなる。

「あー……、やっぱ、最後はどうしてもこれだけ残るんだよなあ」
気がつけば、コンビニで買った花火セットは線香花火を残すのみとなっていた。
美貴と甲斐は、どちらからともなく距離を縮めて屈み込んだ。
「でも、懐かしいなあ……。昔は、お婆ちゃんちでよくやったけど」
甲斐は紙縒りに火を点けて、感慨深げに双眸を細める。
すぐに線香花火が橙色だいだいいろの火の玉を作り、枝分かれして火花を散らし、
夜のしじまにかそけき音を響かせた。
美貴も隣で火を点し、掌で風を遮った。

「お前、もうちょっとこっち寄れよ。風出てきた」
と、吹きつける風に背を向けて、甲斐に腕をくっつける。
線香花火の儚い火花を守る為、二人で風の盾になる。
だが、甲斐と身体を密着させ、初めて美貴はその状況にはっとした。


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