「向かい風を行く」
第五章

向かい風を行く 50

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奉納を終えて、控えのテントに二人一緒に戻った途端、
青年団から力強い拍手が湧き立った。
どの顔も甲斐の健闘をたたえるような笑みを浮かべ、
温かい労いの言葉を競うようにかけてきた。

「甲斐のお蔭で、何とか新入り勢の格好ついたな」
これまであまり甲斐に対していい顔をしなかった連中まで、甲斐の肩や背中をはたいている。
「お疲れさん。よくやった。よく堪えたな。姿勢にブレがなくて綺麗だった」
美貴も上目使いに微笑みながら労った。
「本当ですか?」
「ホント、ホント。マジでお前が一番良かったよ」
 
青年団の連中に囲い込まれ、居心地悪げにしていた甲斐が、
耳をぴんと立てた犬のように振り向いた。

本当は手筒の底からハネが揚がった瞬間に、飛びつくように抱きついてみたかった。
二人でそのまま抱き合って、奉揚の成功を分かち合いたい。喜びたい。
なのに、きっと人目がなくてもそれができない苦しさに、眉をひそめて目を伏せる。

「……今日はお前が一番格好よかったよ」
美貴は隣の甲斐が、かろうじて聞こえるだけの声で言う。
その呟きも、テント内にひしめく男衆や観客達のざわめきや、腹に響く太鼓の音にかき消され、
甲斐の耳に届いたかどうかわからない。

新人の奉揚は甲斐によって締めくくられ、青年団のベテラン勢の奉揚になると、
横一列に何名もの演者が並び、
一斉に手筒花火を打ち上げるなど、祭りの興奮は最高潮に達していた。


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