「向かい風を行く」
第三章

向かい風を行く 21

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それであんなに他人を避けていたのかと、美貴はようやく腑に落ちた。
甲斐に対して感じていた多くの疑問がそれぞれ線で繋がった。
美貴はそうだったのかと言おうとした。
そうだったのかと思っている自分がいた。
それなのに頭と口と感情が分断され、思い通りに動かない。
そうなんだ。一言そう言えばいいのにと、頭ではわかっていた。
それがまず声になって出なかった。

わだかまりは解け、納得した。頭はすぐに言われたことを理解した。
けれど、わかると同時に自然に湧いてくるはずの
感情が岩のように動かない。この場合、何をどう感じるべきかを考えている
自分がいた。
合点がいったからこそ驚いたのだ。
無防備のままでみぞおちを拳でいきなり殴られたかのようだった。

これまで同性愛者がいることは、単なる知識にすぎなかった。
知ってはいるが、存在を直に感じたことはない。
ちょうどテレビでしか見たことがないタレントが、いきなり目の前に現れた。
それほどの衝撃と、ある種の脅威が混じっていた。

「……そっ、か。やっぱ、そういうこともあるんだな」
美貴は動揺を隠せないまま、口先だけで返事をした。
気まずく視線を泳がせた。
まだ心臓がバクバクと激しく胸を打ちつけて、頭がうまく回らない。
作業する手も停止していた美貴の前で、
甲斐は黙々と幟を全部引き抜いて、祭りの幟を挿している。
こんな時、どんな言葉を口にするのが正解なのかが、わからない。
わからないから黙っていた。

「全部取り替えましたけど」
ややあって声をかけられ、はっとして美貴は目を上げた。
「……ああ、そうか。悪いな、なんか」
気がつくと、筒のポール立てから抜き終えた普段の幟を、
甲斐が胸に抱えていた。


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