「向かい風を行く」
第三章

向かい風を行く 19

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だが、美貴が呆けているうちに、
甲斐は参道を逸れて鬱蒼とした雑木林の手前まで行き、
肩越しに淡々と告げてきた。
「俺が抜いていきますから、ヨシキさんは祭り用の幟を入れていって下さい。
その方が早いでしょう?」
「あ、……あ。そうか。そうだな。わかった」
初めて甲斐にリードされ、祭用の幟を慌てて抱え持ち、
言われるままに駆け寄った。
 
どうやら手伝ってくれるつもりらしい。
だが、一体何があったのか。どういう風の吹きまわしだろう。
左胸がドキドキ鼓動を打ちつけて、
じわじわ頬が火照ってくるのが自分でもわかる。
美貴は強張る手足を無理やり動かし、幟が抜かれたポール立てに、
祭りの幟を突っ込んだ。
すると、甲斐は美貴が斜めに差し込んだ幟をまっすぐに整える。
良く言えば几帳面。
悪く言えば嫌味ったらしい奴だとは思いつつ、
それでも顔がにやけてくる。
ずっと『仕方がないからやっている』オーラ全開だった甲斐が率先して
作業を手伝ってくれている。
それがこんなに嬉しいなんて、自分でも想定外だ。
何かおかしな気分だと、美貴は浮かれる自分を頭の隅では
訝しく思っていた。
すると、残りの幟を抜きながら、不意に辛辣な口調で甲斐が言った。

「最近、皆と一緒に飯食ってけとか。あんま言わないですよね。ヨシキさん」
「……へっ?」
今度は話しかけられた。
それだけでもう頭の中が真っ白だ。美貴の口から頓狂な声が飛び出した。
しばらく何を聞かれたのかすらも理解できす、
美貴はその場に立ち尽くした。
「……最初はつきあい悪いの、嫌そうだったじゃないですか」
「まあ、そりゃあ……。なんか感じ悪って、思ってたけど……」
包み隠さず答えると、甲斐の苦笑が聞こえてきた。
だが、ひとしきり笑った後に美貴に向ける眼差しは愛おしむように温かだ。

「だけど、お前。全然馴染む気なさそうだし。
そういえば、なんか気がついたら俺の方が、そっちに行っちゃってたんだな」
確かに最初は無理やりにでも馴染ませようと焦っていた。
それが指導役の務めだとも思っていた。
けれど、甲斐は青年団の一員としてするべき役目は果たしている。
だから今はそれでいいと思っていると、
作業をしながら言い足した。
「まあ、正直俺は、お前が俺に懐いてくれたらそれでいいって感じだし」


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