「向かい風を行く」
第二章

向かい風を行く 13

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「出来ましたよ」
と、合わせ鏡を美貴に向け、後ろ姿も見せてくれる。
襟足は短くしてすっきりと。そして、トップを高く作ったダイヤモンドシルエット。
前髪をやや重めに作り、
レイヤーを入れたサイドをワックスで遊ばせた
理想的な無造作ヘアだ。

「セットはラフに乾かして、ワックス揉みこむだけですから」
「スゲエな、マジで。カットだけで、こんなイメージ変わるんだ」
仔猫のようだった薄茶色のふわふわ癖毛が、
雑誌で見るような洗練された無造作ヘアに一新されてしまっていた。
美貴は早速、携帯を出して自撮りした。
「榊原さんにも見せてやろう」
「え……っ!?」
弟子の腕前は何点ですか? と、コメントをつけて送信した。
「榊原さんにって、なんでですか! ちょっと、やめて下さいよ!」
甲斐はぎょっとして美貴の携帯を取ろうとした。
それがまた可愛らしくておかしくて、美貴は椅子から立ち上がり、
慌てる甲斐から逃げ出した。

榊原にはファミレスで名刺をもらったその夜に、
図々しく邪魔をした謝罪のメールを入れていた。
すると、榊原の方から、ちょくちょく連絡が入るようになったのだ。
大抵は甲斐を通してのやりとりだ。
榊原からは、バイトの休憩時間に居眠りしている甲斐の姿や、
女優やモデルのメイクをする、
緊張気味の甲斐の横顔の隠し撮り。
美貴も竹筒に藁縄を巻くワイルドな甲斐を、こっそり撮って送ったら、
榊原に妙に喜ばれた。

「あっ、返信もう来た。甲斐が好きそうなスタイルだってさ。
俺の事、自分好みにしただけだろって言われてんぞ?
そうなんだ。お前って、こういうナチュラル系女子、好きなんだ」
「なに言ってんですか。違いますよ」
からかう美貴を咎めるように一瞥し、甲斐はカットクロスを取り外した。

その後も、顔についた短い髪をハケで払い落としたり、
指で摘んで除くなど、最後の気配りまで忘れない。
そんな甲斐の指が目元や頬に触れるたび、
美貴は胸の奥がさざ波立ってくるような、甘美な騒めきを覚えていた。


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