「向かい風を行く」
第二章

向かい風を行く 9

 ←向かい風を行く 8 →向かい風を行く 10
「それじゃ、榊原さん。私達、そろそろ失礼します。
今日は遅くまで話を聞かせて下さって、ありがとうございました」
石橋とその女友達が礼を言い、
榊原も苦笑を顔に貼りつかせたまま席を立つ。
そのどさくさに紛れるように帰ろうとする甲斐を美貴は引き止めた。

「何だよ。俺がいつお前と約束したんだよ」
肘を掴まれ、よろめきながら再びソファに倒れ込んだ甲斐に、
美貴は小声で詰め寄った。
「すみません。……あの、実はさっきの石橋さん。
いろいろ悪い噂が多い子なんで、ちょっとと思って」
「悪い噂?」
「その、……綺麗ですけど強引な所もありますし。相手の都合もあんまり考えないんで、
美貴さんに迷惑かけると困ると思って、つい……」
「ふーん……」
一応、庇ってくれたらしい。
美貴は意外に思いつつ、憤然と唇をひん曲げる。
 
それより、甲斐の口から『綺麗』などという、
褒め言葉が出てきた方が心外だ。
むしろ、石橋にも茶髪のゆるふわ美少女にも関心がないのかと思っていた。
けれど、甲斐の中にも綺麗だとか可愛いとか、
女への生々しい評価や感情がある。
当たり前といえば当たり前の事なのに。
自分だって石橋は美人だと思ったのに、美貴は知りたくもない事を聞かされた。
そんな気がして苛立った。
まるで、自分の彼女が別の男に目を奪われて褒めたように。

「そんなヤバイ女、いいのかよ。あの榊原って人に紹介して」
「榊原さんにも全部話しました。俺が紹介しろってしつこく言われて困っていたら、
一回会うだけ会うって言ってくれて……」
渋々口を割りながら、一刻も早く解放しろと目顔で訴えかけてくる。
レジの前では石橋達や榊原が訝しげに、こちらを見ながら待っている。
仕方なくその場はそれで収めたものの、
その五日後に神社で会うと、美貴は再び甲斐に詰め寄った。

「おい、いつ俺の髪切ってくれんだよ」
甲斐の前にしゃがみ込み、威圧的に覗き込んだ。
だが、甲斐は手元の作業に没頭し、あからさまに聞き流している。
境内に敷かれたゴザの上で竹筒に麻布を何重にも巻きつけて、
更にその上に荒縄を巻いていた。


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
にほんブログ村 BL小説

ピクシブでは限りなくBLに寄せていますが、一般小説の歴史ものを書きました。戦国時代、織田信長の桶狭間の戦いは本当に奇襲だったのかが、テーマです。
ピクシブの【サドンデス】のページは→こちらから。
小説投稿サイト【 カクヨム 】でも、
『東京ラプソディ』という、昭和初期のカフェーを舞台にした、レトロなBLを書いています。
東京ラプソディの【 カクヨム 】ページは→ こちら から
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png ホワイトナイト
総もくじ 3kaku_s_L.png ほんとのことを言ってくれ
総もくじ 3kaku_s_L.png 夜のギヤマン
総もくじ 3kaku_s_L.png 死か降伏か
総もくじ 3kaku_s_L.png 咲かない桜の桜守
総もくじ 3kaku_s_L.png 向かい風を行く
総もくじ 3kaku_s_L.png 一緒にいようよ
もくじ  3kaku_s_L.png 電子書籍関連
総もくじ  3kaku_s_L.png ホワイトナイト
総もくじ  3kaku_s_L.png ほんとのことを言ってくれ
総もくじ  3kaku_s_L.png 夜のギヤマン
総もくじ  3kaku_s_L.png 死か降伏か
総もくじ  3kaku_s_L.png 咲かない桜の桜守
総もくじ  3kaku_s_L.png 向かい風を行く
総もくじ  3kaku_s_L.png 一緒にいようよ
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
【向かい風を行く 8】へ  【向かい風を行く 10】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 現在非公開コメン卜投稿不可です。
  • 【向かい風を行く 8】へ
  • 【向かい風を行く 10】へ