「向かい風を行く」
第一章

向かい風を行く 3

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「なんか俺。新入社員がつきあい悪くてへこんでる、
中年リーマンみたいじゃないですか」
美貴は神社近くのお好み焼き屋の座敷席で、かけいを相手に訴えた。
神事の顔合わせの初日は最後に皆で飯を食う。
それは美貴の中では暗黙の了解になっていた。
実際、竹の切り出しに行った団員以外にも、
美貴と筧が召集をかけると、
仕事終わりの団員が続々姿を見せていた。

「まあ、こっちもはっきり言ってなかったし。バイト入ってんなら、しょうがねえだろ」
団長の筧も美貴の肩を叩きつつ、
とりなすように笑ったが、表情はやはり優れない。
そうは言っても藤木の方は、次々現れる先輩団員に挨拶に行き、
楽しげに笑い合っている。
そんな藤木が視界の端をちらつくたび、
甲斐に対して、こういう日ぐらいシフトは外して来いよなと、
胸の中で悪態をついてしまっていた。

「そういえば、今年はもう一人入ってただろう? 新人が」
隣の団員に訝しそうに呟かれ、美貴の鼓動がドキンと跳ねる。
「あっ……、と。まあ、入ったけどさ。
今日はちょっと都合が悪いらしくて帰ってった。
本人も申し訳なさそうだったけど」
 
甲斐の代わりにしどろもどろに弁明し、
美貴は決まり悪さを誤魔化すようにグラスのビールを飲み干した。
考え過ぎだと思っても、
暗に自分の指導役としての監督不行届きを咎められた気さえした。
酒が進めば進むほど、甲斐への恨み節も止まらなくなる。
 
まだ十代の甲斐には町内会の呑み会なんて面倒臭いだけだろう。
しかし、そうした付き合いを重ねながら地域の人間関係を培って、
助け合って生きていく。
それも大人の責務なんだと教え込むのも、自分の今の立場でもある。
甲斐も藤木のように、そんな事は言われなくても察してくれる
新人だったら良かったのにと、ジョッキを片手に頬杖ついて不貞腐れた。
 
鄙びた座敷を占拠している青年団の気の置けない男達は、
お好焼きを肴にしながら酒を呑み、
今年の山車の引き手を誰にするか、真面目に話し合っている。
その円陣に藤木も混ざって賑やかに語らい、互いに返杯し合っていた。
誰ももう、ここにはいない甲斐なんて頭にないかのようだった。
 
藤木はどんどん馴染んでいき、甲斐だけ取り残されていく。
美貴は自分の方が落ち着かなくなり、堪らず甲斐にメールした。


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