「咲かない桜の桜守」
第七章

咲かない桜の桜守 43

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「今日は帰らなくてもいいんですよね?」
松田の胸に頬を押しつけ、甘えるように訊ねると、
短く松田が頷いてくれる。
羽太は大きな腕にくるみこまれるようにして公園の遊歩道から
駐車場まで移動した。そして、互いの車を前後に連ねて山を下り、
山麓の自宅まで帰って来た。

玄関灯も点されない家の鍵を開ける時、
胸の風穴に一陣の寒風が吹き抜ける夜もあるけれど、今日は隣に松田がいる。
羽太は視線を甘く絡ませて、玄関の引き戸を嬉々として開け、
松田がいつも使っている奥座敷に案内する。    
「松田さん、腹減ってるって言ってましたよね? もうこんな時間になっちゃったんで、
温かいうどんとか、お茶漬けみたいな簡単な物にしましょうか?
がっつり食べたかったら、肉でも焼きますけど」
年代物の柱時計に目をやると、既に十一時を回っている。
松田は座敷の隅にビジネス鞄とディパックを置いた。

「そうだな。……なんか、もうそんな腹も減ってない」
「そうですか? じゃあ、先にお風呂入れましょうか?」
肩越しに再度訊ねても、こもった声で「ああ」だの「うん」だの言うだけだ。
ふいと視線を逸らされてしまう。
そんな松田に違和感を覚えつつ、それなら風呂上がりのビールのあてに、
何か二、三品作ればいいかと算段し、布団を延べてシーツをかける。
松田はコートとジャケットをハンガーに通して衣桁にかけ、
ネクタイのノットを緩めている。
「それじゃあ、風呂の湯が溜まるまでリビングで休んでて下さい。
温かいお茶でも出しますよ」
松田の布団を整えた羽太が膝を浮かせた時だった。
いきなり天井灯の紐を引き、
部屋の明かりを消した松田に肩を突かれてよろめいた。

「わっ、ひゃ……っ、な、わあっ……!」
布団に尻餅ついた途端、両肩口を鷲掴みにされ、敷き布団に倒される。
続いて羽太を跨いで馬乗りになり、
腰から下の動きを封じた松田に獰猛な目で射抜かれた。

「……松田さ、……ん」
痛いほど肩を抑えられ、羽太はごくりと生唾を呑み込んだ。
蒼いような闇の中に松田の身体の輪郭が、やけに黒々と浮きあがり、
羽太を無言で威圧する。まさかこれはと松田の暴挙を理解しかけたその刹那、
威嚇するように声を一段低くした。
「……俺の好きは、こういう好きだって言っただろ」
「えっ……?」
「嫌なら今、言え。言わないと……」


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