「咲かない桜の桜守」
第六章

咲かない桜の桜守 42

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「……何とか言えよ」
肩越しに顔をのぞかせて、松田が憮然と促した。
匂うような春の夜風が花つきの枝を広げ、松田の周囲で花びらが舞った。
月の光を浴びながら星屑のように閃いた。
羽太は、まるで魂を絡め獲られたように目を細め、夢見心地で聞き返す。
「僕が励みになったのは、どうして……」
と、か細い声で問いつめる。

「松田さんのその『好き』は、どういう意味の好きですか?」
強ばった松田の背中がさっきから好きだ、好きだと喚いている。
まるで少年のようにいじらしい彼を微笑みながら追いつめた。

松田のその『好き』は、本当に自分と同じ意味なのか。
それは言わずもがなの事だとしても確かめたかった。言わせたいのだ。
松田が言えと迫ったように、この耳で聞きたい衝動にかられていた。
あふれる想いを眼差しに込めて見つめていると、
松田が弱りきった顔になる。

「……そこまで言わせる気なのか?」
と、くすぐったそうに苦笑した。
ひどく決まりの悪い顔で、羽太の髪にも落ちた桜の花びらを
そっと摘んで取ってくれる。
「羽太……」
切なげな囁きが頭の上から降ってきた。
髪をたどって頬まで下りた掌の熱。
端正な松田の顔がキスの角度で迫ってくるのを伏し目がちに眺めつつ、
羽太は陶然として目を閉じた。  

「俺の好きはこういう好きだ」
そっと触れあわせただけで松田の唇が僅かに離され、「お前は?」と、
囁かれた。まるで恫喝するような目の色だ。
羽太は長身の彼の首に飛びつくように腕を回し、
「僕も、……僕も」 
と、くり返した。   

松田が恋人にしか向けない笑顔も気遣いも、誰にもやらない。
渡さない。
こんなに彼を欲しがる自分。
ともすれば平家桜にまで妬いていた自分にようやく気づかされ、
腹の底から熱くなる。   
「……羽太」    
凍えるぐらい寒いのに、燃えるように熱い身体を抱きしめる松田の腕に、
いっそう力が込められる。羽太も競うように抱き返す。
二人の身体の間には花びら一枚割り込む隙もない程に。
羽太は松田の胸にすっぽりと抱込まれ、吐息を淡く色づかせた。


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