「咲かない桜の桜守」
第三章

咲かない桜の桜守 21

 ←咲かない桜の桜守 20 →咲かない桜の桜守 22
鼓膜を震わす低い声。
抑揚のない言い方も、確かに松田のものだった。
三日前に別れて以来のその声に、羽太は矢で胸を射抜かれたようになっていた。
「あ……っ、と。あの、えっと」
ろくに返事もできずにいると、『今の動画見たけど』
と、松田の方から言い出した。

「あっ、はい。……あの、皮が剥がれた所から、黄色い膿みたいな汁が出てるんです」
『それ、たぶんイチョウ病の兆候だ』
「……えっ?」
『土の中にいるカビの一種の病原菌が原因の樹膚病だ。
やっぱり樹の抵抗力が落ちてるから、感染しやすくなってるな』
最初に土を掘り返し、炭を混ぜて埋めたのも、感染症の予防の意味もあったらしい。
松田が苦々しく唸っている。

『だけど、イチョウ病なら土に消毒薬を散布すれば治せる病気だ。
できるだけ早く、そっちに行くから心配するな』
「で……、でも、大丈夫なんですか? こんな状態で、感染症になるなんて……」
羽太は声を上擦らせた。
付ぎ足した新しい根も、まだ完全には機能していないのか。
幹の根元に射してあるプラスチックケースの解毒剤も三分の一ほど残っている。
鼓動が不穏に乱れ打ち、何も言葉が見つからない。
携帯を耳にあてたまま、茫然と羽太は黙り込んだ。すると、意を決したように、
松田が力強く切り出した。
『わかった。じゃあ、明日の夕方までにはそっちに行く』
「松田さん」
『きちんと処置すれば大丈夫だ。だから、そんな声出すなって』



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
にほんブログ村 BL小説


ピクシブでは限りなくBLに寄せていますが、一般小説の歴史ものを書きました。戦国時代、織田信長の桶狭間の戦いは本当に奇襲だったのかが、テーマです。
ピクシブの【サドンデス】のページは→こちらから。
小説投稿サイト【 カクヨム 】でも、
『東京ラプソディ』という、昭和初期のカフェーを舞台にした、レトロなBLを書いています。
東京ラプソディの【 カクヨム 】ページは→ こちら から
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png ホワイトナイト
総もくじ 3kaku_s_L.png ほんとのことを言ってくれ
総もくじ 3kaku_s_L.png 夜のギヤマン
総もくじ 3kaku_s_L.png 死か降伏か
総もくじ 3kaku_s_L.png 咲かない桜の桜守
総もくじ 3kaku_s_L.png 向かい風を行く
総もくじ 3kaku_s_L.png 一緒にいようよ
もくじ  3kaku_s_L.png 電子書籍関連
総もくじ  3kaku_s_L.png ホワイトナイト
総もくじ  3kaku_s_L.png ほんとのことを言ってくれ
総もくじ  3kaku_s_L.png 夜のギヤマン
総もくじ  3kaku_s_L.png 死か降伏か
総もくじ  3kaku_s_L.png 咲かない桜の桜守
総もくじ  3kaku_s_L.png 向かい風を行く
総もくじ  3kaku_s_L.png 一緒にいようよ
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
【咲かない桜の桜守 20】へ  【咲かない桜の桜守 22】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 現在非公開コメン卜投稿不可です。
  • 【咲かない桜の桜守 20】へ
  • 【咲かない桜の桜守 22】へ