「咲かない桜の桜守」
第二章

咲かない桜の桜守 15

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その後も松田は平家桜にハシゴを掛け、枯れ枝を鉈で落としていた。
休日なのに様子を見に来た小泉は、
太い枝にも躊躇なく鉈をふるう松田を見上げて眉をひそめ、
羽太に囁きかけてきた。 

「本当に大丈夫かよ。あんなにバッサバッサ切っちゃって」
「専門家が切るべきだって判断したなら、切るべきなんじゃないですか?」
「だけど、せっかく樹齢八百年の古木なのに。貧相になっちゃうだろう。
見栄えが悪くなっちゃったら、写真家も撮りに来てくれなくなっちゃうし」
「健康な桜の枝を無闇に切ってるわけじゃないんだし。
野菜だって枯れた葉っぱは摘み取らないと、株を弱らせてしまうじゃないですか。
それと一緒なんだと思いますよ」
羽太は不満げに嘆く小泉を宥めるように笑いかけた。
彼のの危惧もわからないではなかったが、見栄えを気にする小泉より、
平家桜の命を繋ごうと、黙々と励む松田を応援したかった。

「そういえば、さっき根付ぎした根を踏まれないよう、
申し訳ないんですけど、勝手にロープ張らせてもらったんです。
役場の方でも立入禁止の看板を立ててもらえませんか?」
険しい顔つきの小泉に努めて明るく依頼した。
「ああ、週明けの月曜日には手配する」
小泉は不承不承に頷いて、聞えよがしに嘆息した。
それきり小泉は公園を離れたが、羽太は切り落とされた桜の枝をせっせと拾い、
差し入れの弁当や缶コーヒーを、ふるまった。

そうして朝から続いた根付ぎの作業も、気がつけば日没間近になっていた。 
真っ赤な山の稜線に影絵のように浮き立つ木立。
雪残の山肌に峰々の影が斜に落ちている。 

「それじゃあ、後はできるだけたくさん平家桜を写メか動画で送ってくれ。
それを見て、何かあれば、すぐに来る」
しばらくして、二人の頭上から降りてきた松田が地面に着くなり羽太に言った。
「えっ……?」
「俺はメールでもラインでもいいけど、どっちがいい?」
「えっ、……と。はい。じゃあ、ラインの方が」
羽太はコートのポケットから携帯を取り出した。
という事は、このまま松田は奈良の自宅に帰ってしまうのだろうか。



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