「咲かない桜の桜守」
第二章

咲かない桜の桜守 11

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「だったら、今日は風もないし天気もいい。今日のうちに済ませよう」    
 
松田は晴れやかに微笑んだ。
そして、桜を離れて、すれ違いざま羽太の肩をポンとはたいて促した。
同時に夢から覚めたように、羽太は両目を瞬かせ、慌てて左右を見回した。
「……えっ、と。済ませておこうって」
「根付ぎは一人じゃできないんだ。予定がないなら手伝ってくれ。仕事か? 今日も」
「いえ、今日は祝日ですから休みです。予定もないんで、それは全然構いませんけど。
だけど、僕みたいな素人なんかで手伝えますか?」     
「心配するな。難しい事は頼まない」   
羽太は、かえって桜を傷つけないかと躊躇った。すると、羽太の不安を松田の一言が一掃する。
「俺は、お前ならできると思ったから頼んでる」

肩越しに不敵な笑みを寄越し、松田は「車に積んだ道具を取りに行って来る」と、
歩を速める。それは、羽太なら必ず承諾すると確信している男の足取りだ。
ずるいと思った。
あんな目をしたあんな男に、あんな声で言われたら、誰が嫌だと言えるだろう。
羽太は唇を引き結び、松田の背中を睨みつけた。
松田は振り返りもせず庭木戸を開け、裏の駐車場へと向かっている。

「じゃあ、道具運ぶの、手伝います!」
どうせ意地を張っても迷っても、きっと後を追ってしまう。
持ち主として平家桜にしてやれる事があるのなら。
そして、松田が「できる」と、自分を選んでくれたなら、弁解の余地は何もない。
羽太は半ば自棄になって声を張った。走り出すと、気後れも恐れも薄衣のように
肩から滑り落ちていた。



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