「咲かない桜の桜守」
第二章

咲かない桜の桜守 7

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「え、……っと。あの、じゃあ、食べられない物とか、
何かあります?
良ければ地鶏の鍋でも
しようと思ってるんだけど」
「好き嫌いは、ない」    
「きのこやチーズも大丈夫?」   
「大丈夫」   
 
松田の圧倒的な存在感にあてられて、羽太は思わず敬語を忘れ、
しどろもどろに問いかけた。それでも気軽にタメ口で返される。
思っていたより気さくな面もあるのかと、松田の顔色を伺いつつ、
おずおずと缶ビールを差し出した。
すると、松田はビールのプルトップを開いた後、立ち呑みしながら興味深げに
手元を覗きこんできた。

「すぐできますから、リビングでテレビでも見てて下さいよ」     
「テレビもゲームもSNSも好きじゃない。こっちの方がおもしろい」  

邪魔だと眉をしかめても、松田は羽太の顔色を読むどころか、むしろ背後から張りついて、
地産のきのこを物珍しげに眺めている。   
「松田さんは料理はしないんですか?」
「しない」
「じゃあ、結婚されてるんですか?」
「してない」
「……でしょうねえ」
「なんでだよ」
「こんなマイペースな人が結婚できるわけないじゃないですか。してるとしたら奥さん、神ですよ。神」
 
土鍋をコンロにかけて毒づくと、松田はあからさまに顔をしかめ、キッチンを出て行った。
そして不貞腐れたままダイニングテーブルの椅子に無言で腰を下ろし、黙々とビールを呷り出す。         
「ほらー、すぐまたそういう顔するじゃないですか。そういう所ですよ。そういうトコ」          
「……うるせえなあ」 
「まあ、大人しく待っててくれていた方が、僕は助かりますけどね」   

羽太は小さく吹き出した。あまりにもわかりやすいからだった。
普段は一人の食卓に人の声がすること自体しばらくなかった事だった。
羽太は思った以上に自分でも浮かれているのを感じていた。

「そういえば、松田さんって治療器具とか薬とか、いつも持ち歩いてるんですか?」

コンロにかけた土鍋に具材を入れつつ、背後の松田に問いかける。
昨日の今日でいきなり治療を依頼した。それなのに、粛々と処置を施す松田が不思議だったのだ。
鍋の具が煮えるまでの突出しに、
はんぺんのチーズ焼きと長芋の梅肉和えをダイニングテーブルに並べた後、
テーブルを挟み、松田の正面に腰をかけた。



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