「死か降伏か」
第三章 LOSE-LOSE

死か降伏か 60

 ←死か降伏か 59 →死か降伏か 61
「……と、いう様に」
 
息を凝らす沖田を見つめ、淫靡な微笑を浮かべたかと思ったら、
千尋は沖田に向けた銃を下げた。

「剣ではどうしたって敵わない間合いというものがあるのです」

何の装飾もない黒い短銃の銃身を無造作に帯に差し入れて、
含み笑いを続けている。

「まあ、当たればの話ですが」
なぶらないでくださいよ。寿命が縮んだじゃないですか」
 
やっと、やらかわれたのだと沖田は悟り、肩で大きく息を吐いた。
早鐘をうつ胸の鼓動が、無意識にあてた掌にも響いている。
沖田は大げさに眉尻を下げて抗議した。それでも、千尋はまだおかしそうに
くつくつ喉を鳴らしている。

「さっきから、ここで見させてもらっていましたが。
どうやら、あなたは右の足の裏が甲高で、土踏まずが高いようです。まあ、言うなればガニ股です。
だから、弾が左に流れるんです。剣と違って銃は足で撃つんですよ」
 
千尋は沖田に再び銃を握らせ、肘の傾斜、手首の角度を調整すると、
最後に沖田の右足の親指のつけ根を踏みつける。
そしてそのまま、
「撃て」
と、言わんばかりに的を顎でしゃくって見せた。
 
沖田が素直に引き金を引くと、弾は廃寺の壁に取りつけた的の円の右端を打ち抜いて、
白い硝煙をあげていた。

「うわっ、信じられない! 弾が当たった。当たりましたよ、千尋さん!」
「当たってませんよ、沖田君。まだ弾筋が的の範囲内に納まったというだけの話です」
「ですが、私はこの半月間どんなに練習しても、
円の中どころか、的の札にも当たらず仕舞いだったんです」
 
沖田は思わず小躍りしながら歓喜した。
千尋がどんな手を使ったのかは、わからない。とにかく、銃の持ち方、構えにばかり
捕らわれていた自分のこだわりが、間違っていたということだけは理解した。
だが、沖田はすぐに真顔に戻り、
たおやかに笑んでいる千尋に非難めいた口調で言った。

「どうして、あなたはこんなに親切にしてくれるんです」 
 
またこんな風に懐内に忍び込み、油断を誘って寝首をかこうというのかと、
沖田は険しく眉を寄せた。

「私は佑輔さんをダシにして、あなたを「たばかった男なのに」




にほんブログ村
にほんブログ村 BL小説

小説投稿サイト【 カクヨム 】でも、
『東京ラプソディ』という、昭和初期のカフェーを舞台にした、レトロなBLを書いています。
東京ラプソディの【 カクヨム 】ページは→ こちら から
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png ホワイトナイト
総もくじ 3kaku_s_L.png ほんとのことを言ってくれ
総もくじ 3kaku_s_L.png 夜のギヤマン
総もくじ 3kaku_s_L.png 死か降伏か
総もくじ 3kaku_s_L.png 咲かない桜の桜守
総もくじ 3kaku_s_L.png 向かい風を行く
総もくじ 3kaku_s_L.png 一緒にいようよ
もくじ  3kaku_s_L.png 電子書籍関連
総もくじ  3kaku_s_L.png ホワイトナイト
総もくじ  3kaku_s_L.png ほんとのことを言ってくれ
総もくじ  3kaku_s_L.png 夜のギヤマン
総もくじ  3kaku_s_L.png 死か降伏か
総もくじ  3kaku_s_L.png 咲かない桜の桜守
総もくじ  3kaku_s_L.png 向かい風を行く
総もくじ  3kaku_s_L.png 一緒にいようよ
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
【死か降伏か 59】へ  【死か降伏か 61】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 現在非公開コメン卜投稿不可です。
  • 【死か降伏か 59】へ
  • 【死か降伏か 61】へ