「死か降伏か」
第三章 LOSE-LOSE

死か降伏か 52

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「そもそも、どうして薩摩は急に会津と手を組むなんて、言い出したんだ」

御花畑の御門前まで移動した土方は、
当然のように常に自分の隣ににいる朋友の近藤に、聞こえるように呟いた。

薩摩は、幕府と朝廷の関係回復を画策する公武合体派ではあるものの、
決して幕府を擁護する佐幕派ではない。
薩摩藩主の島津斉彬しまづなりあきらは、自分の養女を十三代将軍徳川家定に嫁がせて、
幕府内での発言権を強めている。
そういう意味では、むしろ長州藩のように自分たちこそ徳川家から日本の政権を略奪し、
掌握せしめんとする討幕派である。

少なくとも土方は、薩摩に関してはそう思っている。

「あんたは何か聞いていないのか?」
 
暑気で蒸された烏帽子を外す近藤に、険しい口調で問い質した。
律儀な近藤は参内するなら烏帽子えぼしぐらい被らなければと、土方にまで強要した。
けれど、それを断固拒否して平隊士と同様に、
鉢金入りの白鉢巻を額に巻いた軽装だ。

土方は、近藤の頭から水でも浴びたような大汗を睨みつけ、
それみたことかと、腹の中で吐き捨てる。
事態がよめない焦りと暑さで土方も、誰彼かまわず噛みつきたいほど苛立った。

「さあ。俺は何も聞いていない」
 
近藤は滝のように汗が伝う骨ばった顔を、
御門近くの手水で洗い、気のない声であしらった。
それでも土方は追及する。

「薩摩は去年、島津公の行列を下馬もせずに横切った英国人を
横浜で三人も斬った。
その報復で、薩摩は国元まで英国艦隊に攻め込まれ、城も町も壊滅したと言われている。
それがつい、先月までの話だろう。復興で莫大な金が入用の上、
賠償金まで請求されたそうじゃないか。
今の薩摩に、こんなところで油を売っている暇も金もないはずだ」



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