「死か降伏か」
第二章 綾なす姦計

死か降伏か 39

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中川宮親王なかがわのみやしんのうは、今上帝の妹宮であらせられる和宮内親王かずのみやちかこないしんのう殿下の
将軍家ご降嫁という、公武合体こうぶがったい政策にも力を尽くしていらっしゃった。
鎖国はお望みでも、倒幕は本意ではない今上帝の複雑な御心情にも理解を示され、
今上帝からの信任も大変お篤い御方dす。
宮の御言葉であれば、今上帝も御心を動かされ、
長州藩の策略を退けて下さるかもしれません。
そして、なにより中川宮親王なかがわのみやしんのうは、先の十三代将軍徳川家定とくがわいえさだ公ご逝去の折、
十四代将軍として一橋慶喜ひとつばしよしのぶ公を
推挙された」

その瞬間、千尋が椅子を蹴倒して立ちあがり、
テーブル越しに沖田に凄んで睨みつける。

「……こいつに何をさせる気だ」
一橋慶喜ひとつばしよしのぶ公の御小姓でもあらせられる久藤様なら、中川宮にも面識がおありのはずです。
違いますか?」

沖田は悪鬼の形相で間近に迫る千尋から、その隣にいる佑輔に
視線を移して、さらりと言う。 

「久藤様には中川宮親王からも行幸中止を今上帝に今一度
進言してくださるよう、宮を説得していただきたい」
「断る」
「実際、宮に接見するのは久藤様のみになるでしょう。ですが、どう宮を攻略するかは
千尋さんがお考えになって下さい。
そうすれば、あなた方は会津藩の窮地を救った、会津にとっての『恩人』です。
土方も、もうお二人には手出しできません」
「知ったことか……っ!」
「私は、久藤様のお気持ちを伺いたい」
「その必要はない」
 
千尋は佑輔の強ばる肩口を力強く抱き寄せた。

「Hijikata will be going to murder me, so I'm gonna be alright.
You have applied the strategy anymore.
土方は俺を斬ろうとするだろう。
だが、もうそれに関しては手を打った。だから、何も心配するな)」
 
当惑しきった顔を向ける佑輔の耳に口を寄せ、
沖田を横目にしながら囁いた。

「Leave it to me.(俺に任せろ)Got it? Dear.(いいな?)」
「But……」 
「沖田さん」
 
千尋は沖田を仇のように睨み据え、テーブルの下で佑輔の右手を握りしめた。

(注1)公武合体こうぶがったい政策
今上帝の孝明天皇の妹宮を、第14代将軍徳川家茂に降嫁させ、
伝統的権威である朝廷と、幕府の結びつきを強化して、
国力を高めようとする政策。
中川宮親王はそれにより、経済的にも困窮していた
公卿の権威と財政の立て直しを画策した。




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