「ホワイトナイト」
第三章

ホワイトナイト27

 ←ホワイトナイト26 →ホワイトナイト28
「別に、お前だって一人じゃねえだろ」
 やがて陽介はつっけんどんに言い放ち、再び箸を持ち上げた。そして、あっという間に耳の先まで赤くすると、ひたすら鯉の小骨を取り除いて言う。
「そのために俺がいるんだろう?」
「そうなんですね、きっと」
「きっと?」
「いえ。そうなんだなあって思ってますよ」

 猛は不本意そうに凄んだ彼を、宥めるように笑んでみせた。
 途端にあからさまに視線を逸らされ、思わず小さく吹き出した。半年前に再会して、まさかこんな風に打ち解けられる日が来るなんて、思いもしないことだった。 
 湧き立つような歓喜を胸に、陽介のグラスにビールを注ぐと、陽介はふいに眼差しを鋭くする。

「そういえば、お前。やけに瀬田の機嫌取ってたけどな」     
「はあっ?」                  
「あいつは俺に気があるんだからな。お前が狙ったって無駄だ。諦めろ」  
 猛が注いだビールを一気に呑み干し、グラスの底を塗りのテーブルに叩きつける。
「何ですか、それ。っていうか、いつ僕が?」
 いきなり何を言い出すのかと、猛も負けじと声を荒げる。   
「狙ってなんかいませんよ! 陽介さんがフォローしないからじゃないですか! ……ってか、何なんですか! その超上から目線の忠告は」   
 もしかしたら、あんなにつれなくしたくせに、本当は瀬田が好きなのだろうか。こうして反論した途端、口を噤んでしまった所もますます怪しいと、猛は陽介にカマをかける。

「陽介さんこそどうなんですか。そんなこと言うぐらいだから瀬田さんのこと、本当は気にしているんでしょう」              「絡むなよ。酔っ払い」       
「なんで話を逸らすんですか。怪しいなあ。やっぱり瀬田さん可愛いし。あんな風にアピールされたら悪い気しないんじゃないですか?」  
 猛はテーブル越しに身を乗り出して詰め寄った。冷やかすように目を眇め、語尾を野卑に跳ねあげさせると、額をパチンと叩かれる。

「瀬田はただのクライアントだ。コンサルタントがクライアントに手なんか出せるか。信用問題だろうが」   
 と、語気を荒げた陽介を、猛は一瞬惚けたように切なく見つめた。
「……そうですよね。綾さんはクライアントじゃないんだし」     
「はあ?」
 綾は陽介にとって対等なパートナーであり、同志でもある。 
 けれども、クライアントは対象外だと言われてしまうと、瀬田と一緒に自分も排除されてしまった気がした。 
 自分は男なのだから、そもそも対象にすらならないことはわかっているのに、綾との落差を感じるたびに心がささくれ立ってくる。猛は手酌で自分のグラスにビールを注ぎ、一気にそれを呑み干した。

「なんで急に綾さんが……」 
 陽介は引き合いに綾を出された事に面食らったように言葉を濁した。と、そのとき個室のドアがノックされ、返事を待たずに押し開かれたドアの向こうに金髪美人が立っている。   
「よ、う、……すけ?」
「イリーナ?」




にほんブログ村
にほんブログ村 BL小説

小説投稿サイト【 カクヨム 】でも、
『東京ラプソディ』という、昭和初期のカフェーを舞台にした、レトロなBLを書いています。
東京ラプソディの【 カクヨム 】ページは→ こちら から
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png ホワイトナイト
総もくじ 3kaku_s_L.png ほんとのことを言ってくれ
総もくじ 3kaku_s_L.png 夜のギヤマン
総もくじ 3kaku_s_L.png 死か降伏か
総もくじ 3kaku_s_L.png 咲かない桜の桜守
総もくじ 3kaku_s_L.png 向かい風を行く
もくじ  3kaku_s_L.png 電子書籍関連
総もくじ  3kaku_s_L.png ホワイトナイト
総もくじ  3kaku_s_L.png ほんとのことを言ってくれ
総もくじ  3kaku_s_L.png 夜のギヤマン
総もくじ  3kaku_s_L.png 死か降伏か
総もくじ  3kaku_s_L.png 咲かない桜の桜守
総もくじ  3kaku_s_L.png 向かい風を行く
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
【ホワイトナイト26】へ  【ホワイトナイト28】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 現在非公開コメン卜投稿不可です。
  • 【ホワイトナイト26】へ
  • 【ホワイトナイト28】へ