「死か降伏か」
第一章 OBEY

死か降伏か 13

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「わかりました」
 
苦々しげに目を伏せて、沖田は身を翻してえんに出る。
縁に面した中庭には、蔦屋に斬られた隊士の腕や足などがゴミのようにたらいに積まれ、
無造作に放置されていた。

いったい我が身と隊に何が起きたというのだろうか。

あまりのことに言葉を失い、唇だけを喘がせていると、質素な茅葺かやの裏門から
隊士の宮迫みやさこが現れた。

「宮迫さん! 宮迫さんは確か蘭語がおわかりでしたよね?」
 
咄嗟に沖田は沓脱ぎ岩で草履を引っかけつつ、中庭に出て呼び止める。

「ええ、少しですが」
「よかった。それでは『どんまーだー』って、どういう意味になりますか?」
「沖田さん。それは蘭語ではなくて英語です」

宮迫は苦笑いして訂正し、引いていた大八車を足元に置いた。
剣の腕もさることながら、豊富な知識と語学力を買われ、
入隊してきた精鋭だ。
 
米粒に目と鼻と口を一筆書きしたようなあっさりした顔の汗を手ぬぐいで拭き、
にこにこと人懐こく微笑みながら沖田に答える。

「『どんまーだー』とは、『殺すな』という意味です」
「では、『えくせぷしょん』とは?」
「『例外』もしくは『特別』」
「『ひーずえくせぷしょん』では、どうなりますか?」
「『彼は例外だ』、ということになりますね」
「ありがとうございます。助かりました」

満足した沖田は縁に戻ってあぐらをかき、神経質に指の爪を噛み出した。
宮迫は切断された手足が入った盥を台車に乗せながら、
感嘆の目で沖田を見る。

「すごいな。沖田さんは完璧に聞き取れているじゃないですか。よほど耳がいいんでしょう」
「総司。英語がどうした」

土方は沖田の隣にしゃがみ込んだ。

「蔦屋の主人は、私は『特別な存在だから殺すな』と、言ったんです」
「蔦屋が、か?」
「彼らは私達に聞かれたくないことは、英語でしゃべったんだと思います」




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