「死か降伏か」
第一章 OBEY

死か降伏か 12

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「あれで、十五……」
「何だ? 総司」

土方が肩越しに振り返り、ギロリと横目で睨んできた。

「いえ、……すみません。まさか、まだそんなに若いだなんて」
「お前と互角にやりあったらしいじゃねえか。十五と聞けば心外だろう」

失笑混じりに皮肉を言われ、沖田は拳を握り込んだ。
土方の物言いに腹が立ったわけではない。
互角にやりあったなどと口が裂けても言えないことは、自分がいちばんわかっていた。
あの時、蔦屋が仲裁に入って来なければ
確実に頭を割られていた。

幼い頃から剣聖などとおだてられ、
いつしか己の腕に奢り高ぶっていたからこそ、十五の子供に打ち負かされた現実に
こんなにも動揺するのだろう。
沖田は自身の未熟さにホゾを噛むような思いでいた。

しかし、その間にも病人部屋から顔を出した町医者が、新たな死者の人数を二人に告げる。

「合わせて死人は十一か……」
 
これでまた、隊士の補充をかけなければならなくなった。
時間も費用も余分にかかる。日々のまかないにさえ事欠く今の壬生浪士組に、
とても賄えるとは思えない。
腕を組んで黙り込んだ土方に、沖田はいてもたってもいられなくなり板間に額づき、
大声で詫びた。

「申し訳ございませんでした! 私が応戦した為に、事を大きくしてしまい」
「もういい。お前が詫びる筋でもねえ。元はといえば、芹沢が押し借りなんかするからだ」
「ですが、場合によっては、
水戸藩附家老ふかろう久藤家の若殿様に抜刀した咎に
私も問われるはず……」

「そうなれば、何としてでも総司は俺が守ってやる。
だが、それはそうなったらの話だろう。今は奉行所の詮議を待つしかねえ」

土方は青ざめる弟分を無骨に慰め、叱咤した。

壬生浪士組でも最大派閥の芹沢一派が恐喝まがいのやり方で、
島原や祇園などでの遊興費をあちこちの商家から巻きあげているとの悪評は
土方の耳にも届いていた。

だが、芹沢鴨は烏合の衆の壬生浪士組には、希少ともいえる武士階級。

水戸藩士の芹沢の働きかけで、会津藩主との謁見が可能になり、
自分達は、晴れて会津若松藩御預かりの身となることができたのだ。
本人もそれを傘にきて、
立場上同等であるはずの近藤が、忠告すらできずにいるのが現状だ。

今度のことでも騒ぎの発端となった芹沢は
島原にずっと居続けて、屯所に戻ってさえいない。
同志といっても芹沢は武士だ。
自分や近藤は奥多摩で生まれた農民身分のままなのか。主家を持たない浪人か。
それとも少なくとも会津藩の奉公人なのかすら
判然としない自分達に、武士の芹沢に手は出せない。
それがどんなに歯がゆくても、だ。

「お前がここにいたって仕方がない。とっとと夜間の巡察に行け」

土方は項垂れる沖田を顎でしゃくって促した。




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