「死か降伏か」
第一章 OBEY

死か降伏か 4

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芹沢は茫然自失になりながら、
それでも背後に迫った花村の殺気を感じて、振り向いた。
しかし、同時に大立ち回りで酔いが回った芹沢は、たたらを踏んで態勢を崩し、
冷たい土間に転倒した。

肩越しに仰ぎ見れば、店の奥を守るように番頭の花村が
刀を向けて立っている。
また、前方では店の間口を塞ぐように、
若い男がぬるい笑みを浮かべている。その男が頭上で構える脇差の切っ先が、
夏の日射しを照り返すように閃いた。

芹沢は吹き出した汗が額から首へまるで血のように、流れ落ちるのを感じていた。

もはや、自分もこれまでか。
かっと目を見開いた芹沢は、肩で息を喘がせる。けれどくうを切り、
振り下ろされた若い男の脇差に、
別の刀身が滑り込むように差し込まれ、男の刀を十文字型に遮った。
そして、やにわに、

「先生、早く!」

壬生浪士組副長助勤じょきんの沖田総司が蔦屋の主人と
刀を交わしてり合いつつ、
あっけにとられて座り込む芹沢に、何度も声高に訴えた。

その間ずっと、沖田の額の真上では、二人のつばが焦れるように
キリキリと音をたてている。それはまるできつく奥歯を食いしばる、互いの歯ののようだった。

突如として修羅場と化した蔦屋の前で、
沖田とともに駆けつけた壬生浪士組の隊士らが、救護を求める呼び子をけたたましく吹き鳴らし、
人々はみな悲鳴をあげ、三々五々に散って行く。
 
酔って足元もおぼつかない芹沢も、若い隊士に脇を抱え上げられて、
木偶でくのように引きずられながら店を出た。

沖田は逃げる芹沢を視界の端で確認し、顔の前で合わせた男の刀を払い上げた。
そしてそのまま刀を返し、背後の花村の脇に峰打ちをくれ、
振り返りざまに若い男の細い首を殴打した。
男は打ち据えられて土間に倒れたその直後、
バネのように跳ね起きて、左手を自身の懐に突っ込んだ。
「動くな!」
沖田は刃先を男の喉元に突きつけた。




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