「ホワイトナイト」
第三章

ホワイトナイト23

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「アメリカからずっと手紙出してたのに、一回も返事来なかったし」
 あっという間に平らげた小鉢をテーブルの端に追いやって、陽介がようやく顔を上げた。しかし、思いもかけない陽介の言葉に、さらに猛は困惑した。

「僕、手紙なんて受け取ってません」
「……えっ?」          
「いつ? いつ手紙くれたの? 陽介さん」

 猛は思わず敬語を忘れ、身を乗り出させて詰め寄った。              
 陽介からもアメリカでの生活が落ち着いたら、連絡すると言われていた。けれども、結果的に一度も連絡は取れずにいた。どうしてそんなことになったのだろうと、猛は瞳を激しく戦慄かせていた。

「……じゃあ。もしかしたら、お前の親が渡さなかったのかもしれねえな」
 ぽつりとこぼした陽介が、もの憂い仕草で頬杖をつく。
「どうして、うちの親がそんなこと……」
「俺の家族が急にアメリカに移住したのは、親父の会社が倒産したのがきっかけなんだよ。親父は親父で借金残して自分だけトンヅラしやがるし。専業主婦の母親一人で一億七千万なんて大金、返せるはずがねえだろう? しょうがねえから子供を連れてアメリカの親戚んちに逃げたんだ」  
 陽介は映画のストーリーでも聞かせるように、ごく淡々と話し続ける。        
「そんな面倒臭い事情の家と、大事な旅館の跡取り息子。つき合わせるわけにはいかねえとか、思ったんじゃねえのかな。俺も緒やが借金踏み倒して逃げてきたから、居所突き止められないようネット使うなって言われてたし。日本の知り合いとは連絡取るのも無理だったから」

「そんな……」
「それでも、お前とだけは切れたくなくて。親に内緒で何度か手紙は出したんだ。だけど、結局返事はなかったし。うちもアメリカ国内転々として、ずっと引っ越ししまくってたし。だから返事が来ないんだって、思うようにしてたけど」   
 そう言いながら、ふいに陽介が侘しく微笑む。  
 陽介もまた『やむをえない事情』のせいで、連絡が途絶えてしまったのだと自身に言って聞かせてきた。そう思わないと悲しすぎてやりきれないと、自分で自分を誤魔化して……。  

 離れていても二人ともに同じ思いでいたことを知り、猛は胸を熱くする。
 お前とだけは切れたくなかった。 
 陽介のその一言で十年分の失望も涙も全部洗われ、救われたような気がしていると、陽介は猛のために馬刺しを取り分け、すすめてくれる。




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