「ホワイトナイト」
第一章

ホワイトナイト1

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抜けるように青い秋空によく映える、木曽連山のなだらかな襞。
 森閑とした旧街道を石碑や大杉などを眺めながら下っていくと、やがて江戸の情緒を往時のままに残した宿場町が現れる。
 でこぼこした石畳の街道添いに、軒を列ねる連子格子の二階屋や旅籠。
 なまこ壁の白い土蔵。
 道添いの水路を覗けば鮒が泳ぎ、水車小屋の屋根の上ではモズが熟れすぎた柿を啄ばんでいる。 

 名所旧跡の乏しい山間の宿場町だが、山歩きを楽しむ夫婦やバックパッカーの外国人で俄に活気づくのはやはり秋だ。それも、日本の原風景としか言いようがない今日のような晩秋だ。 

「いろいろお世話になりました」
「お気をつけていっていらっしゃいませ。ありがとうございました」      
 彦坂猛は彦坂旅館の玄関口で男前のビジネスマンを最後に見送り、チェックアウトの業務を終えた。
 だが、ほっとひと息ついて母屋の事務室に戻ってくると、番頭の山岸から成井陽介(なるいようすけ)の来訪を告げられる。       
 彦坂旅館の若旦那として雑事に追われる自分が唯一、肩の荷を降ろすことができる貴重な時間を見計らっているかのようだ。猛はその周到さに覚えず眉間を曇らせた。

「わかった。すぐ行きます」
 と、答えるそばから固まる頬を、自分で叩いて目を伏せる。 
 江戸の中期に豪商宅を買い取り、開業したという由緒ある旅籠屋を継ぎ、半年以上になるというのに、今だに陽介に会うとなると、もうそれだけで気が滅入る。           

 きっと、先日渡した利き酒会の企画書の件で、また何か難癖をつけに来たのだろう。猛は事務室のデスクから企画書のコピーを取り出し、強ばる肩を上下させた。




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