「夜のギヤマン」
第六章

夜のギヤマン20

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 二人を乗せたエレベーターが停止して、よそよそしいほど無口になった神谷と鬼島を吐き出して閉じる。神谷は先に歩を進め、自宅のドアの鍵を開けた。
「どうぞ、入って下さい。ビールか何か呑みますか?」
 鬼島を招き入れて鍵をかけ、電気を点けた時だった。後ろから肘を掴まれ引き戻されると、ぶつかるように口づけられる。
「んっ、……っんん」
「神谷……」
「わっ、ちょっ……、鬼島、さ……」
 慌てて鬼島を押し返しても、濃密なキスで口を塞がれ抗議の言葉も意味をなさない。息を継ぐたび合わせる角度を変えながら、神谷もいつしか舌を舐め、互いに互いのキスを深めた。

「鬼島さん……」
 名残惜しげに唇が離され、間近で鬼島と目と目を交わす。熱く潤んだ双眸に自分の顔が映って見えた。
 鄙猥に濡れた赤い唇。
 鬼島の頬にかかる髪をそっと指で撫でつけて、神谷の方から唇を重ねる。

「どこや?……ベッドは」
「……えっ?」
「とぼけんなや。……言えよ。早う」
「その前にシャワーだけでも使いましょうよ」
 会話の合間に啄ばむようにキスを交わし、焦れて苛立つ鬼島に笑みをこぼした。その時廊下に向かって開いたドアにちらりと視線を投げた刹那、鬼島にいきなり抱き上げられる。
「ちょっと鬼島さ、……っ」
「……るせえっ。風呂なんか後で入りゃいいんだよ」    
 鬼島は忌ま忌ましげに吐き捨てながら、神谷が一瞬視線を投げた部屋に一目散に運びこむ。半端に開いたドアを蹴って中へ入り、窓際のベッドに神谷を下ろして乗り上げてきた。

「……ん、んんっ」
「腕。……痛ないか?」
「大丈夫。……痛み止めも効いてるし」  
 ベッドの上で互いに服を脱がし合い、ぶつかるようにキスを重ねる。やがて鬼島に押されて身を横たえると、神谷の顔を挟むように鬼島が両手をつきつつ囁いた。

「なんか嘘みてえだな」
「……何がですか?」
「お前も俺も男やし。……見るからに育ちの良さげな坊っちゃんやったけ。わしなんざ絶対相手にされん思うとった」 
「そんなの僕の方ですよ。鬼島さんの方が僕よりずっと鬼島さんの方がモテてたくせに」 
 近づきたいのに取り巻きにすらなれなくて、指をくわえて見ているしかない人だった。神谷は確かめるように鬼島の頬に手を伸ばし、夢見心地で瞳を細める。
「……神谷」
 かすれた声で旭を呼んで、鬼島がキスで応えてくれる。神谷は両手で鬼島を抱き寄せ、胸をあわせて口づけ合った。     




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